【コロナの先の学習評価の行方(11)】パフォーマンス課題とルーブリック作成上の注意点

京都大学准教授 石井 英真
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思考・判断・表現の評価方法として注目されるパフォーマンス課題は、「使える」レベルの思考を試すものです。それは、「問題のための問題」(思考する必然性を欠いた不自然な問題)に陥りがちな、学校での学習や評価の文脈をより真正なものへと問い直すものです。

パフォーマンス課題作成のポイント

パフォーマンス課題というと、「あなたは○○です…」といったシミュレーション的なシナリオから始まるものですが、そうした文脈の真正さよりも、思考過程の真正さ、学びのプロセスに見いだせる教科の本質(見方・考え方)を追求することが重要です。まずは教師自身が教科の眼鏡で現実世界を見渡し、教科の知やものの考え方が生かされている場面を発見し、その場面を切り取ることです。その上で、教師が経験した思考過程を子供もたどれるように、課題を設計するとよいでしょう。

真正のパフォーマンス課題は、しばしば評価課題であると同時に学習課題でもあります。学習課題としての性格を強調すると、作品制作過程での教師の指導、子供同士の協働を重視することになります。

特に、単元の中に埋め込まれる際には、「一人では解けないけれどもみんなと一緒ならできた」という経験を通して、「使える」レベルの思考を体験させたり、個々の内容の学び直しを促したりするのが有効です。

しかし、そうすると課題に対するパフォーマンスは、個人に力が付いたことの証明とはなりにくいという問題が生じます。この点に関しては、例えば、大学の卒業論文の評価で口頭試問が行われるように、「作品の共同制作+個々人による作品解説」、「共同での作品発表+個々人による改訂版の作成」といった具合に、共同作業と個人作業を組み合わせるとよいでしょう。

パフォーマンス評価に関わって、「ルーブリック評価」という誤解を招くような言葉遣いも耳にします。ルーブリックという表が先にあり、その物差しを子供に当てはめて評価するような捉え方は本末転倒です。本来は、あるパフォーマンスを見たときに、そこに何を見てどのような点からそのようにレベルを判断したのか、専門家としての見方や判断を可視化するために基準表を作成することで、これが逆になってはなりません。図表化されたルーブリックはあくまでも説明の道具であって、評価自体は教師の判断をベースになされるのです。

故に、ルーブリック(表)を作成して終わりというのではなく、そうした基準表づくりやその共有化の過程で評価者の見る目を鍛え、評価力を高めていくことにつなげねばならないのです。


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