【コロナの先の学習評価の行方(12)】探究的な学びの評価とは

京都大学准教授 石井 英真
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主題単元の形で構成され、PBLを軸に展開する「総合的な学習(探究)の時間」は、研究的な問いや社会的な問題などを巡って、時に専門家や地域の人たちと共に探究を深めるものです。そこでは、活動を通して生み出される作品(レポート、論文、提案書、スピーチ、身体表現、演劇、アート作品など)のみならず、子供一人一人の個性的な探究の物語(学びの履歴)に着目して、その試行錯誤のプロセスの中に学びの価値を発見し、支援していくことが大事になるため、ポートフォリオ評価法の活用が有効です。

学校で育成する資質・能力の全体像を捉える枠組み(石井英真『今求められる学力と学びとは―コンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影』2015年、p.23)

教育活動の文脈でのポートフォリオとは、学びの履歴の質的エビデンス(学習者が学習過程で残した作文、レポート、作品、テスト、活動過程の様子を残したメモや動画や写真など)を、系統的に蓄積していくものを指します。ポートフォリオ評価法とは、ポートフォリオづくり(目的や状況や提示する相手に応じて、残す内容を選んだり差し替えたりする編集作業)を通して学習者の自己評価を促すとともに、教師も学習者の学習活動と自らの教育活動を評価するアプローチです。

「総合的な学習(探究)の時間」のカリキュラム上の固有の意味を考慮するなら、自律的な課題や問いの設定・再構成、あるいは必要な情報を自ら収集・分析する経験などに注目すべきです(表)。学習サイクルの節目も念頭に置きながら、課題発見、情報収集・分析、やり抜く力、協働、自己評価、表現といった具合に、主に育てられる資質・能力の要素を明確化することで、それらを観点として子供たちのパフォーマンスの質的な変容や成長を記述し、評価していくことができます。

また、「総合的な学習(探究)の時間」については、教科の延長線上に発展的・総合的に学んでいくような形(教科発展型)もあれば、課題探究や教科横断性や知の総合を中心に据える形(探究・総合型)、特別活動とリンクした社会的活動に重点が置かれる形(自治活動型)もあります。教科発展型であれば知識を使いこなす総合的な思考が、自治活動型であれば社会的な能力や責任感が、目標としてより重視されることになるでしょう。いずれにしても、研究や活動の成功が必ずしも学びの成功を意味するわけではなく、きれいな結果は出なくても、泥臭くこだわり抜いた過程にこそ学びの価値は見いだされます。高校の課題研究などは、大学での専門的な学びの前倒しに傾斜し過ぎず、自らの枠や甘さを乗り越えるような人間教育としての意味を再確認する必要があります。


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