【生きる教育(2)】心を育てた「国語科教育」

大阪市立生野南小学校主務教諭 小野 太恵子
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対人関係による要医療件数が31件にまで上った2014年、現状を断ち切る第一歩として、「暴力をことばに」をテーマに国語科研究をスタートさせた。当時、子供たちにとって「ことば」は、人を傷つけたり、自分が否定されたりする凶器のようなものであった。

ことばで紡ぐ「『生きる』教育

そんな価値観を根底から変えていくために、徹底したスモールステップの下、実態に即した読解方法を見いだし、「伝えたいこと」で子供たちの心がいっぱいになるようにした。「ことば」は、心地よい距離感を保つことや、孤独から解放されることを可能にし、喜びを分かち合う術となった。

安心して力いっぱい学習する楽しさを知った子供たちは、難解な文章をこちらの想像をはるかに超える勢いで読み取っていく。そんな「仕掛け」をつくる授業者のアイデアには、いつも子供たちを想う「心」があった。

19年の全国学力・学習状況調査では、算数・国語ともに初めて全国平均を上回った。また、大阪市の経年学力調査でも全教科プラスに出た。6年をかけ、「ことばを教える」から「ことばにこだわる」、さらには「心を伝える」「心を育てる」域にまで発展できるということ、授業が持つ可能性を子供たちから教えてもらった。

同時に、学校という場が子供たちの心の安全基地となるように、問題行動への対応を緻密に体系化し、一人の児童の「人権」を徹底して守り切ったことで、学校という場が全ての児童の心の安全基地となった。また、心を耕す人権教育を充実させ、国語科以外の教科でも深く広く指導力の研さんを重ね、対話する力の育成を目指す授業づくりをしていった。

その結果、子供たちはデリケートな内容にも向き合い、考え、発言する力を付け、どんなことも受け止められる温かい集団に育った。子供たちのこうした力を基盤にし、教職員の「授業を創る力」を研ぎ澄ましたことで、自分を誇り、他者を尊重し、過去・現在・未来の全てに向き合える子供を育てる、本校の「『生きる』教育」が誕生した。

「『生きる』教育」とは、生い立ちや親子関係に課題を抱える子供に対し、アタッチメント(愛着)理論を踏まえ、自己肯定感を高めるための支援として、実践授業をもって直接アプローチをかける取り組みである。

困難を乗り越え、頑張って生きてきた。そんな人生を対話の中で分かち合い、友達の力でエンパワーメントできるような実践を目指している。5年をかけてつくってきた各学年の授業の一つ一つを、次回より紹介したい。


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