【学びの危機(2)】長期休校と格差の拡大

津田塾大学准教授 柴田 邦臣
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大学まで自家用車を走らせていると、晴れ着にマスク姿の若者がそこかしこに歩いている。2021年1月11日は史上初めての「緊急事態宣言下での成人の日」となった。しかし、川を渡ると新成人を見掛けなくなった。この市では式典が中止かオンラインになったのだろう。一生に一度の晴れ舞台も、自治体・地域の事情、そして新型コロナウィルス感染症(COVID―19)の感染状況によって、運命は分岐する。このような「格差の拡大」こそが、COVID―19がもたらした学びの危機・Learning Crisisの1つである。

休校中に特別支援学校が実施していた教育内容(津田塾大学Learning Crisis研究会の全国調査より)

 20年の「全国一斉の長期休校」も地域・学校によって大きな格差があった。特に、特別支援学校においてその影響が大きかったことが、津田塾大学Learning Crisis研究会の全国調査によって明らかになっている※。大半の学校が長期休校中に「課題・プリント配布」(94・6%)、「電話・FAXでの状況確認」(90・3%)などを実施していた。加えて3分の2の特別支援学校(63・7%)が、何らかの形でオンライン化に取り組んでいた。

 とはいえ、その内実は双方向型のオンライン授業と言えるものから、「学校ホームページなどを用いた教材配信」や「行政などのサービス紹介」など一方通行型の情報配信にとどまるものまで、さまざまだった。さらに、3分の1の特別支援学校は、オンライン化に乗り出すことさえできなかった。長期休校の間、子どもたちの学習経験には、同じ義務教育とは言えないほどの格差が生まれていたのである。

 さらに調査では、家庭の事情ごとのより深刻な格差も浮き彫りになった。その格差は、自宅にパソコン・ネットがないなど、デジタル面だけではなく、「共働きで丸つけができない」「兄弟が多く勉強場所がない」など、家庭学習の長期化は生活の数だけ格差を生んだ。平等な学びの機会を提供するはずの教育が、長く家庭学習に依存していたという事実は、格差の源泉という観点からより検証されなければならない。

 特別支援教育・インクルーシブ教育の最大の長所は、人手と時間をかけて、それぞれの事情に合わせて子どもたちの学ぶ意欲を引き出し、支えることにあった。それを一律に中断するという決断が、障害のある子どもたちにどれほど停滞や後退を強いたかは、改めて検証される必要がある。長引く停滞の中で、私たちは子どもたちの「多様さ」に「丁寧に寄り添う」余裕を失いつつある。それが取り返しのつかない格差を生むという現実に、鋭敏になる必要がありそうだ。

※「学びの危機」プロジェクト(まなキキ)調査報告:https://learningcrisis.net/?p=14490


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