【生きる教育(3)】小1「大切な心と体~プライベートゾーン~」

大阪市立生野南小学校主務教諭 小野 太恵子
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子供たちの「当たり前」は、本当に安全・安心であるか。そう問い掛けることから本校の実践はスタートする。

プライベートゾーンに関する授業の様子

第一次では、教材を通し「おかしい」や「はずかしい」の基準を対話の中で丁寧に確かめていく。「危険」「不安」「不潔」を正しく判断していく中で、生活経験から成る価値観を再構築すべき児童もいるからだ。

体内から生じる汚れの対処法を確認する過程において、「プライベートゾーン」についての知識が必要となる。お風呂に入るため、掲示物の男女児童の下着を取ろうとすると、子供たちは「きゃー!!」と恥ずかしそうに目を覆う。「恥ずかしい」は恥じるべき感情ではない。指導者はこの健全な心の成長を受け止めて大いに褒め、子供たちに「どうして恥ずかしいの?」と問う。子供たちが一生懸命考え、言葉にするその一つ一つが、心と体を結ぶプライベートゾーンの「約束」となる。

第二次では、適切な性の距離感を学ぶ。ここでは1982年、カナダ赤十字社で作られた性虐待防止を目的としたケアキットプログラムを授業の基盤としている。2017年当時の養護教諭が、あいち小児保健医療総合センターへ赴き、その理念を持ち帰った。その後、校内で検討を重ね、1年生の発達段階に適した教材をやさしいタッチで手作りした。

どんな場面でも相手の心を尊重することを根拠とし、子供たちが自ら距離感のルールを見いだす。さらに、相手が親しい大人の場合でも「NO」と言えるか、今度は自分の身を守るための価値観を築いていく。「NO」と言えずに起こる性被害には、幼いほど「知らなかった」が起因することが多い。また、親しいからこそ言えないこともある。ここでは、スキンシップの明確な線引きと同時に、子供たちが同居する家族以外にも、守ってくれる人や場所があることを、はっきりと伝えている。

警察や「子供110番の家」などと同じように、校区にある児童養護施設について紹介するとき、施設の子供たちは照れ笑いをする。後の小3・小6・中3でも社会的養護や福祉資源について触れる場面を設定しており、幼いうちから段階的に正しく理解させることで「かわいそうな子」という偏った認識を抑止することも「『生きる』教育」の狙いである。

何より、今、家族という狭い世界の中で苦しんでいる子供がいるなら、社会システムとして守られる外の世界があることを、早急に知らせる必要がある。

たくさんの人に守られる、あなたは大切な存在――。これが、本実践の一番初めに子供たちに伝えたいメッセージである。


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