【先生ができること(4)】弁護士業務で感じる性差別構造のこと②

弁護士 太田 啓子
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夫婦間でひどい暴力やハラスメントがあっても、女性がなかなか離婚に踏み切れない重要な背景に、経済力の乏しさがあります。女性の経済力は本当に低く、性差別の象徴として極めて深刻な問題だと思います。

妻の就業時間別共働き世帯数の推移(令和2年版男女共同参画白書)

いわゆる正社員同士で比べても、女性の賃金は男性の75%程度です。これは、女性の勤続年数が男性より短かく、上級管理職が少ないことに由来します。また、非正規雇用労働者(年齢計)は、女性が56・1%、男性が22・8%です(男女共同参画白書令和2年版参照)。

出産後も働く女性は増えてはいますが、第1子出産を機に離職する女性の割合は、今もなお高いものがあります。理由は、育児や介護などの家庭内のケア労働が、女性に著しく偏っているからです。これは、「家事育児は女性がすべき」という固定的性別役割分業意識がいまだに根強く、社会内のいろいろな仕組みも男女が対等であることを尊重する在り方になっていないからです。

この社会全体にある男女間の賃金格差は、そのまま夫婦間の収入格差にスライドします。共働き世帯は増えていますが、その中で妻が正規雇用という世帯数は横ばいのままで、妻が非正規雇用という世帯のみが増えているのです(グラフ参照)。

離婚相談でも、夫の収入は数百万円で妻の収入は数十万円というケースが多数あります。どんなに夫が高収入でも、離婚をすれば多くの女性は経済的に困窮するため、夫のDVやモラルハラスメント、繰り返す浮気などの横暴な態度に耐えて婚姻関係を続けるか、離婚して貧困を抱えるかの二択を迫られます。子どもがいればなおさらで、法律相談に来たものの、受け取れる財産分与と養育費の見込を聞いて、「子どもが大学を卒業するまでは離婚できない」と帰っていく女性も少なくありません。

女性は経済力を持ちづらい仕組みがこの社会には厳然としてあり、そのことが個人の自由な生き方の妨げになっていることを日々の仕事で痛感します。性差別構造をなくすべく、固定的性別役割分業意識をなくし、性別にかかわらず平等で対等な関係性を構築できる人を社会に増やしていくためには、子どもの頃からの教育が本当に重要だと思います。自分が子育てをするようになり、そのことを改めて感じるようになりました。

子どもは幼児期から、社会から、性別によって異なるメッセージを受け取ります。次回以降は、そうした現状から考えるようになったことを書いていきます。


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