【生きる教育(4)】小2「命のルーツをたどる」

大阪市立生野南小学校主務教諭 小野 太恵子
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小学2、3、4年生における実践理念は、「ライフストーリーワーク(LSW)」にある。社会的養護のもとで暮らす子供たちの中には、生い立ちの記憶に空白があったり、離れて暮らす親を美化したり、自分を責めたりするケースが少なくない。本校では過去・現在・未来を紡ぐ心理治療教育の一環であるLSWを、大阪ライフストーリー研究会に学び「『生きる』教育」に取り入れている。2年生ではまず、命のルーツ「赤ちゃん」をテーマに授業を展開する。

「いのちのふれあい授業」で赤ちゃんを抱っこする児童

第一次では、エドワード・T・ホール氏の「パーソナルスペース」を参考にした距離のリボンを用い、体験活動を通して1年生で学んだことを発展的に振り返る。赤ちゃんだった頃、養育者との間に必要だった距離と今とを比較し、自分の成長に気付くきっかけとする。

第二次では、妊婦体験や「いのちのふれあい授業」を通し、妊婦さんや赤ちゃんから命の重さや温かさを直接感じることができるようにする。記憶の中の親子関係が脆弱(ぜいじゃく)な児童の中には、赤ちゃんを不思議な生き物と捉え、時には怖がる場合もある。そのまま母親になることは、できるなら避けたい。自分がしてもらえなかったことを、わが子にはできるように、知識と経験という形で赤ちゃんを肯定的に受け入れられる授業が必要だと考えている。誕生までの命の奇跡を知り、はにかみながら赤ちゃんを抱っこしたとき、受け取る温もりや、芽生えた「愛しい」という気持ちを、忘れないでいてほしい。

第三次では、絵本から動物と人間の赤ちゃんの成長の早さを比較する。動物とは違い、時間をかけて大きくなっていく人間の様子を「赤ちゃんの発達カード」を用い、経験も踏まえて話し合う。また、誰かを呼び止めるために泣き、誰を足止めさせるためにほほ笑むなど、赤ちゃんの本能を知ることで、人間だからこそ生じる母子の愛着形成の過程を知り、その不思議と必要性を、友達と一緒に共有する時間を大切にしたい。

お母さんの存在すら知らない児童もいる中で、赤ちゃんとの触れ合い活動を実施するには、最大限の配慮が必要であり、毎年児童養護施設の先生方とは綿密な打ち合わせをしている。しかし、だからこそ、今生きているということは、自分自身もいろんな人にお世話され、いろんな人に抱っこしてもらい、大切に守られてきた存在であると伝え、ここをLSWのスタートとすることが重要だと考えている。

いつか親になった時、「赤ちゃん」という存在をいとおしみ、大切にできる大人に育ってほしいと願う。


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