【コロナの先の学習評価の行方(15)】AIは評価と学校の在り方をどう変えるか?

京都大学准教授 石井 英真
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利用者の好みに合わせて情報提供してくるオンラインショッピングやネット広告のように、関連するもの同士の効率的なマッチングにおいて、AIは強みを発揮します。故に、「個別最適な学び」に注目が集まるのは自然なことで、診断とリコメンドという学習支援ツールとしての可能性はあります。また、自動採点や学習ログなどの分析など、学びの可視化や学力の評価に関する研究と実践においても、AIは力を発揮するでしょう。

学びの個別化と個性化

技術の進歩は、一人一人に応じた教育を実現する方向で展開しています。しかし、「個別最適な学び」は一部の子供の特異な才能をさらに伸ばすための教育にするのか、これまで救いきれなかった子供たちを救いつつ、全ての子供たちのための教育という視点を堅持するのかで、その在り方は異なります。

前者は、学び進む速さや量の違いで個人差を捉え、より高度なスキルへと先に先に進めていくことに傾斜しがちです。一方、後者の視点からは、進んだ子が他の子供に教えたり、学んだことを他の場面で生かして文脈化したりするなどして、立ち止まって深めていくことも考えられます。

例えば、帰国子女など英語が得意な小学生には、クラスを分けてより高度な英語表現を教えればよいと思われがちです。しかし、豊かな言葉の力を育む、その子の強みを生かすという点からは、英語が得意でないクラスメートの学びを支援したり、みんなで取り組むプロジェクトで校歌の英訳を担当するなどのアプローチも考えられます。

ICT活用、修得主義、個別最適な学び、働き方改革、これらは「学校のスリム化」を招きがちです。学校の丸抱え体質は問題ですが、生活の場としての学校、成長につながる学びの保障など、捨ててはいけないものを見極める必要があります。単位数の削減、「学校半日制」的な発想も出てきている中、かつての「学校週5日制」が子供たちにゆとりをもたらしたのかどうかを検証した上で、学校の在り方を考えていく必要があります。

高校段階なら、オンラインのつながりを活用しながら、授業以外にフレックスな時間を設けて学びの時間を増やすことなども考えられるでしょう。すなわち、塾も含め、学校内外で「授業漬け」にされてきた生徒たちに、学びの時間を確保するわけです。ただしそれは、「大きな修得主義」を前提にしないと、勉強を進めることに終始すると思われます。「自習室」(個別化・早修・寺子屋的)よりも「自主ゼミ」(個性化・拡充・大学的)の文化を育てていく必要があるのです。

(おわり)


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