【生きる教育(5)】小3「『今』の自己と向き合う」

大阪市立生野南小学校主務教諭 小野 太恵子
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3年生では、ライフストーリーワーク(LSW)の中間地点として、「子供」について学びながら「今の自分」と向き合う。

「子どもの権利条約」を題材に話し合う児童

第一次で「子どもの権利条約」にある40の条文を提示すると、「守られてへんわ…」とつぶやく児童が毎年いる。この授業はここからがスタートである。戦後すぐの世界人権宣言をはじめ、国際連合やユニセフなど、世界中の大人が組織立って全ての子供の幸せを願った歴史を伝え、二つの基本理念と4つの柱をもとに権利一つ一つへの理解を深める。

第二次では、国や地域によって守られていない権利があることや、18歳になったらできることを学ぶ。その上で、自分にとって大切な権利について考え、2010年に日本ユニセフ協会が実施したアンケート「教室内の気になる権利」を参考にした10の条文をランキングにしていく。グループ内で意見が分かれたとき、自分が大切に思う根拠は「9歳人生」である。ここでは自分の価値観を言葉にし、違いを認め合う時間を大切にしている。

第三次では、児童労働や難民キャンプ、身近なトラブルや家族との葛藤などを盛り込んだ事例を提示し、子供の権利という新しい視点で世界に目を向け、日常を振り返る。事例を通し、改めて「子どもの権利条約」の40の条文を読み返すことで、子供たちが日常の「幸せ」と「我慢」に気付けることが狙いである。

最後に、冒頭の「守られてへんわ……」の着地点を第四次で展開する。子供たちはお悩み相談室に手紙を書き、「お悩み解決ポスト」へ投函する。この時、ポストに手を合わせる児童もいるなど、どの子も真剣である。もちろん担任だけが読み、必要な児童へは個別に対応する。

一方、授業では学級全体の「お悩み」内容を網羅した事例を提示する。どの権利が守られていなくて、誰が、誰に、どうすればよいのか、これまで学んだことを総動員して相談者へのアドバイスを考える。自分に近いお悩みもあり、ここでも皆真剣である。また、自分たちだけでは解決できないと判断する力こそ必要で、つながるべき公的機関を具体的に紹介する。

子供たちの権利を守るのは、あくまで大人の仕事である。権利が守られていないことに直面した子供をどう導くか、数年にわたり検討を重ねてきた。その答えは、子供自身の「受援力」を育てることである。その一助として、自分の「お悩み」を解決しようと一生懸命考えてくれた友達や教師との時間が、人を信じる力となってほしい。

安全な知識と価値観の中で、子供である「今」を全力で楽しみ、いつか「子供」という存在を大切にできる大人に育ってほしいと願う。


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