【学びの危機(4)】長期化と人材、各種資源の困難

津田塾大学准教授 柴田 邦臣
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首都圏のとある特別支援学校では、始業式翌日の2021年1月6日に保護者に向けて「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の徹底について」という通知文書を出した。1月4日に菅首相が第二次の緊急事態宣言発令を予告したのを受けて、保護者に当面の対応を案内する必要があったからである。

教室の机を消毒するスタッフ(都内)

ところがその2日後、その学校は全く同名でほぼ同じ内容の通知を再度出さなければならなくなった。改定されたのは一箇所だけ、「登下校時間の変更」であった。

1月7日に県教委から、緊急事態宣言下での対策強化の通知が発せられた。その中で、通学時の混雑回避が強調されていたため、急きょ、それに対応しなければならなくなったのである。子どもたちは3学期が始まって早々に、登下校時間の大幅な変更を強いられることになった。

第二次緊急事態宣言が飲食店や観光業向けのもので、教育現場はほとんど影響を受けていないと考える人もいるが、それが誤りであることは現場の先生方ほど感じているだろう。昨年の長期休校で批判を受けて以降、文部科学省は「学びを止めるな」「学校を続けろ」の一本調子だが、その号令には常に「適切な感染症対策を行い」クラスターを絶対に起こすなという枕詞が付いている。学校教育において、そのような「新しい生活様式」を守り続ける努力が、教職員にどれほどの疲労を強いているか分かっているのなら、その日常が過酷を越して残酷化しつつあることにも気付いているはずだ。

登下校時間の変更は、たった1時間であっても、障害のある子どもたちには劇的な変化となる。こだわり傾向があるASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害児や、地域に一つしかない特別支援学校への送迎のために通勤時間を調整してきた保護者に、どれほどの特別な努力を強いるかは容易に想像できるだろう。Learning Crisis研究会の全国調査※においても、教職員、保護者、そして子ども自身の限界が近づいているとの意見が見られ、昨年長期間の休校を強いられた学校ほど、運営上の変化を迫られた傾向が出ている。

「コロナ対策に加え、新学習指導要領への対応などの諸課題を含め、行わなければならないことが多すぎる」など、人材・備品・予算など全ての資源が疲弊・枯渇した状況は、学校・家庭など特別支援教育の全体を覆っている。インクルーシブ教育の最前線の一部では、危機を乗り越えるために繰り返し示される新方針や通知が形骸化した絵空事にしか聞こえないほど、困難が深化しつつあると言える。

※「学びの危機」プロジェクト(まなキキ)調査報告:https://learningcrisis.net/?p=14490


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