【生きる教育(8)】小6「家庭について考えよう~心の傷の治療法~」

大阪市立生野南小学校主務教諭 小野 太恵子
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「普通の人ができひんことを乗り越えて頑張ってきた。それを誇りにして生きていったらいい」

人形を用いて子育ての体験活動をする子供たち

授業の中で、一人の児童が友達に贈った言葉である。受け取った児童は「心に刺さった。心の傷と向き合っていくのは不安やけど、自分一人じゃないと思えた」と語った。

山梨県立大学西澤哲教授の「人でできた傷は人でしか癒されない」。2016年度に出合ったこの言葉が、「『生きる』教育」の原点である。小学校での実践のゴールとなる6年生では、親子関係で生じる「心の傷」をテーマとする。

まず、「結婚」について歴史的な切り口から学び、世界にも視野を広げ、文化として捉える。夫婦に必要な法律を想像し、自分たちでつくったものと実際の民法とのギャップに触れることで、パートナーシップには努力が必要なことに気付く。
「子育て」の体験活動では、まず人形を用いて、抱っこや沐浴(もくよく)、オムツ交換などを経験する。「命のふれあい授業」では、「育児」という視点で赤ちゃんと触れ合い、子育ての苦労と喜びを知ることで、命をまるごと引き受ける覚悟を学ぶ。

未来の「家庭」を描く時間では、まず住みたい家の間取りを考え、そこに家族や好きなものを住まわせていく。大家族で住む家、一人で趣味に没頭できる家、動物王国など、さまざまである。結婚と子育てを学んだ上で、自分らしい幸せとは何かを自身に問い掛け、表現することを大切にしている。

最後に「親子関係」について考える。まず、心の傷の信号機として、日常のさまざまな出来事をそれぞれの価値観から赤・青・黄色に分類する。その中で命の安全に関わる出来事はトラウマ(赤信号)になることを伝え、深い傷ができるメカニズムや、放置したときの心身への影響を学び、治療法を考えていく。

専門的な支援者、身近な人、自分自身という視点から、(1)職業、(2)つながりマップ、(3)レジリエンスについて理解を深める。特に、(2)つながりマップでは、赤・青・黄さまざまな心の状態を持つ人が共に生きていくために、どのようにつながり、関わっていけばよいかをグループで図式化する。赤を青で囲んだり、黄色同士をつなげたり、児童が語るどの言葉にも、友達への思いやりとエンパワメントがある。

最後に、(3)レジリエンスとして、心の安全基地を示す。ここに思い出や大切な人をたくさん詰め込み、心が折れそうなときに避難できる場所を自分の中につくり、旅立ってほしい。

卒業式では、「生まれてきてよかった」という人生への誇りを、誰よりも友達から受け取ってほしいと願う。


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