【学びの危機(8)】誰が、支えるのか?

津田塾大学准教授 柴田 邦臣
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「まなキキ講読会」は、毎週火曜の18時から、大学の3年ゼミと同じZoom(オンライン会議システム)上で始まる。連続してつなぎ続けている大学生のところに、大学院生や他大学の学生、中高の先生、福祉施設職員、専業主婦、サラリーマン、さらに多分野の研究者など、さまざまな人たちが集まってくる。

Zoomで開催される「まなキキ講読会」の様子

新型コロナウイルス感染症(COVID―19)は、許し難い「学びの危機」そのものだが、それがなければこのような「学ぶ場」は成立しなかっただろう。私たちLearning Crisis研究会が「まなキキ講読会」を開催している理由は、現前する困難が人材の疲弊や不足、教師側の迷いや葛藤などが、まさに「人」を巡って起こっていると分析しているからだ。この危機に立ち向かうためにまず必要なのは、「特別な時代」に毅然(きぜん)と対峙(たいじ)できるよう「教師・人が成長する場」なのではないか。ここから最終回までは「未来開拓編」として、「それでも『学ぶ』ために必要なもの」を一緒に考えていきたい。

研究会の全国調査※では、「今後、どうするべきか」について、多くの特別支援学校からたくさんの声が寄せられた。そこで第一に示唆されていたのは、危機に対し内外の「役割分担」をうまく活用して臨んでいる学校が、複数見られた点である。特別支援を主とする教員といっても、この状況下で何もかもできるわけではない。そこで、「ITに強い」「動画編集ができる」「在宅課題に詳しい」などの得意領域を踏まえ、児童生徒へのフォロー、保護者への電話連絡、校務分掌などを分担する。事態の進行に応じて教員の役割を大胆かつ柔軟に組み替えることで、危機的状況に対応するケースが散見された。

上意下達に右往左往するうちに、対策を形骸化させている例が多い中で「人を増やせ」と要求するよりも有効だったのは「人材が限られていても最大限に活用する」意識と工夫だった。仲間内に眠る多様性に注目して役割を分担し直せば、できることは幾つも発見できる。その知見を生かして「まなキキ」では、現状下で障害のある子どもたちの教育・IT・そして経済面で多様な人材を参画させる「まなキキ・フォスタープラン」を立案中である。

Learning Crisisは私たちの造語ではない。ユニセフや世界銀行が「学校など制度はできていても、その中身がない」発展途上国の教育状況を説明する用語である。今、日本に起こりつつある教育の形骸化は、まさにLearning Crisisとしか呼べない。形だけ「人やモノ」を増やしても形骸化が進むだけだ。「人」を活用する術(すべ)こそが、危機の克服に必要なのだ。

※「第3回学びの危機カンファレンス


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