【学びの危機(10)】学ぶ意味と「意志の危機」に対峙するために

津田塾大学准教授 柴田 邦臣
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「22!」と画面いっぱいにカードを見せる子どもたちと、「正解!」と拍手をするナビゲーターの大学生たち。算数の授業でもトレーディングカードゲームでもない。オンライン「まなキキ英語サロン」のオリジナル・カードゲーム「44まなキキ」※で、英語の勉強の真っ最中なのだ。

英語学習カードゲーム「44まなキキ」で子どもたちと学ぶナビゲーター

特別支援教育の世界でも、英語学習は急速に低年齢化・本格化している。2020年度は、小学校高学年で英語が教科化された年だった。COVID―19による混乱が重なった不運は、特別支援学校にも今後、長く影を落としかねない。英語教育の現場はLearning Crisisの、最も典型的で深刻化した最前線なのだ。

「44まなキキ」がカードゲームの形式をとっている理由は2つある。1つは「聞くこと」「話すこと」中心の小学校英語に、言葉としてのルール(=文法)をゲームのルールと一体化させて自然に取り入れることで「なぜ、英語ではこう表現するのか」という「意味」を理解するためだ。

一方「新しい生活様式」下の学校には、子どもたちの「なぜ」に答えられない現実が数多く存在する。例年、小学6年生が校外学習で学ぶ内容をなぜ今年は教室のスライドで終了するのか、その意味を説明しているだろうか。

「全てがCOVID―19のせい」という理屈は、子どもたちから「意味」を剥奪する。学校から「なぜ、それを、その順番で、そのように学ぶのか」という「学ぶ意味」が失われつつあることは、Learning Crisisの核心と言えるのではないか。意味なき教育が子どもを引きつける手段はエンタメ化と受験戦争しかないが、それなら子どもたちはYouTubeや塾の動画サイトに逃げるだろう。

そして、「意味」なきところに「意志」は生まれない。「44まなキキ」がゲーム形式で意欲を引き出している理由、さらにLearning Crisisが私たちから剥奪しつつある、最重要な主柱が「学ぶ意志」である。この1年、学校は「努力してもできないこと、どうしようもないこと」に包囲されすぎた。そして、その不合理さを子どもたちに見せ続けてしまった。学びに特別な努力が必要な子どもは、努力では乗り越えられない「特別な時代」の中で、どうやって「学ぶ意志」を育てればよいのだろうか。

これまで、むなしいほどの「形骸化」と、埋めがたいほどの「分断」を指摘してきたLearning Crisisの3つ目の、そして真の姿が、学ぶ「意味と意志の危機」にあるのなら、その処方箋は私たちが子どもたちの前で「くじけず努力する意志」を示し続けることしかない。理不尽な時代に「特別な努力」をし続ける「意志」が、私たちにあるだろうか。

(おわり)

「まなキキ」


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