【小学生からの「主権者教育」(2)】なぜ小学校から始めるべきか

弘前大学教育学部専任講師 蒔田純
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主権者教育はわが国に浸透しつつありますが、一方で、それが行われる場は圧倒的に高校が多くなっています。例えば、総務省の調査では、2015年度における主権者教育の出前授業は、高校では実施校数1652校・受講者数45万3834人であったのに対し、中学校では335校・6万5400人、小学校では575校・4万1603人にとどまっていました(総務省「『主権者教育の推進に関する有識者会議』とりまとめ」より)。

学校段階ごとの出前授業開催状況(2015年度)(上)と、高等学校時に受けた授業の内容(複数回答可)

「議院内閣制とは何か」「小選挙区制とはどのような制度か」といった政治的な知識を教えるだけであれば、18歳が近づいた高校生からでも問題ないと思います。しかし、政治に主体的に関わるために必要なのは、「徹底的に議論をした上で最終的に一つに決める」という基本的な意思決定のプロセスを実践する力です。自分の意見を明確に表明し、相手の意見もよく聞く。対立点があればとことん話し合い、最後はきちんと意見の集約をする。こういった能力は、一朝一夕に身に付くものではありません。よって、物心がつき他者とのコミュニケーションの方法が確立してくる小学生段階から、こういった「議論する訓練」を徐々に行っていくべきだと言えます。

また、自分の生活と政治・社会はつながっていることや、自分の意見を反映させることで社会は変えられることを、幼い段階から実感として持たせることも大切です。「若者の政治離れ」が叫ばれて久しいですが、その主たる理由の一つは、自分の生活に政治がどのように関わっているのか想像できず、「こうなればよいのに」と普段何気なく思っていることと選挙で投票することを結び付けて考えられないという状況があるのではないでしょうか。だとすれば、できるだけ幼い頃から、日常生活と政治とのつながりを分かりやすく子供たちに教えることが必要です。

これまで、小学生が主権者教育の対象になることが皆無であったわけではありません。しかし、それが実施される場合も、政治の中身よりも「選ぶ」ということに重点が置かれ、例えば給食のメニューを何にするか投票で決める等、内容的に政治とは直接関わりを持たないものになるケースが多かったのも事実です。もちろん、こういった取り組みも意義深いものですが、一方で、より直接的に政治を考えさせる機会も必要です。我々一人一人と政治・社会がどのように関係しているのかについて、幼いうちから実践的に学ぶ場を設けることで、政治に積極的に関わることが当たり前という意識が身に付き、主体的な主権者がつくられるのだと考えられます。


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