【小学生からの「主権者教育」(9)】主権者教育の問題点

弘前大学教育学部専任講師 蒔田純
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主権者教育は、必然的に、教育の現場で政治を扱うことを意味します。しかし、日本の教育においてはいまだに、政治はある種タブー視される傾向にあります。

出前授業の様子と投票券、投票箱

1950~70年代、イデオロギー的な学生運動に伴う暴力的な行動や社会からの離反・逸脱が相次ぐ中で、若者・学生の政治的活動を抑制し、教育から政治的要素を排除するための制度が数多く作られました。それを受けて学校現場では政治的な内容について議論することを避け、「政治的中立」の名の下に事実のみを淡々と教える座学中心の政治教育が主流になっていきました。今でも、その名残があるのだと思います。

しかし、現在ではイデオロギー的な二項対立が薄れ、複雑化した社会の中で、多様な価値観の中から自分なりの判断を下したり、それを調整して問題解決をしたりといった素養が求められるようになっています。答えのない時代の教育の役割とは、答えを教えることではなく、自らの答えにたどり着くための方法論を伝え、そのための訓練の場を提供することです。主権者教育とは、まさにそのような能力を身に付ける場を政治分野において提供することだと言えます。

例えば、実際に選挙で投票する際は、個々の政党・候補者がどのような理念・政策を掲げているかを知らなければなりません。主権者教育の場でもできる限り現実に即した政策討論や模擬選挙を行うべきですが、一方で実在する政党の具体的な政策を掲載している教科書・教材はごくわずかで、主権者教育の授業でも実在政党の名を使うことは避けられる傾向にあります。

本来なら主要政党全てに言及することが望ましいですが、それが難しければ、例えば各政党・候補者のサイトを子供に伝え、自分で調べてもらうなどの工夫は可能です。メディアリテラシーの徹底を前提に、子供が一次資料に自らアクセスし、自ら調べて、それを基に議論するという形にすれば、政治的中立と能動的実践的な学びを両立させることは可能です。

「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」は、このような主権者教育の前段に来るものと位置付けています。基本的な議論の仕方や民主的な意思決定のプロセスを学んだ上で、より現実に即した教育に進むべきなのです。そのため、出前授業においても、橋やお祭りといった子供に身近なものを議論の対象とし、実在するお祭りを授業中に例として出すなど、現実とのつながりを意識した進め方をしています。これによって子供たちは、「自分の生活と政治はつながっているのだ」ということを自然に感じることができると考えられます。


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