【小学生からの「主権者教育」(10)】途上国での出前授業

弘前大学教育学部専任講師 蒔田純
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これまで、アニメ動画「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」を用いた出前授業についてお話ししてきましたが、今後はこれを海外、特に途上国に広げていきたいと考えています。民主主義は時間も労力も経済的コストもかかりますが、「みんなで決める」という意思決定の正統性やその過程の透明性などを考えれば、少なくとも一部の人間が意思決定を独占する独裁制や権威主義体制よりも、望ましい政治体制であるとの結論に至るのは必然です。

「Democracy in Polititown」の場面(左上:タイトル、右上:村の会議、左下:完成した橋、右下:お祭り)

しかし、民主主義が世界にあまねく浸透しているかと言えば、そうではありません。いまだに民主主義とは相いれない政治体制を敷いている国が多いのも事実です。そのような国の多くは、民主的に物事を決められないことが、社会の経済的・文化的な発展を阻害する一因になっています。独裁者が私腹を肥やすために富を独占し、結果として必要な資源が国民に行き渡らなかったり、少数の権力者が自らの立場を守るために国民を抑圧したり、意思決定を公正に行うプロセスが欠けているために権力を巡る暴力的な争いが起きたりしています。このように、途上国で散見される低成長、貧困、紛争などをもたらす要因は、詰まるところ民主主義が敷かれていないことに求められる場合が多いと考えられます。民主主義は、経済的・社会的・文化的な発展に至るための大前提なのです。

世界全体の平和と安全に寄与することが先進国としての日本の役割だとすれば、こうした途上国に民主主義の種を植え付け、それを育てていくことは、その中心的な課題の一つです。民主主義の広め方にもさまざまな方法がありますが、将来を見据えた持続可能な民主主義の浸透を念頭に置くならば、途上国の子供たちをその取り組みの主たる対象とすることが考え得るでしょう。子供たちに民主主義を、社会を成り立たせる上での大前提であると認識させることで、将来的に国全体に民主主義が広まり、民主的な成熟度が高まっていくと想定されるのです。

このような問題意識の下、筆者は既に「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」の英語版「Democracy in Polititown」を完成させ、途上国の小学校に出前授業を受け入れていただくべく、交渉を開始しています。残念ながら新型コロナの影響でいまだ実施には至っていませんが、幾つかの国からは前向きな返事をいただいており、海外渡航が解禁された後は、さまざまな国で実施していきたいと考えています。民主主義を定着・浸透させるためには地道な活動が必要。そう信じて、世界中を舞台に、この出前授業を続けていきたいと思います。

(おわり)


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