株式会社SPACE代表取締役CEO 福本 理恵
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ROCKETで行われるプログラムに「解剖して食す」というものがあります。毎年異なる食材が手渡され、子どもたちは約5時間、それらと格闘することになるのですが、2016年は、エビ・カニなど甲殻類が用意されました。
このプログラムの特徴は「教科書なし、時間制限なし」であることです。その条件の下、ミッションは食材をさばいて食べるだけですが、用意された甲殻類は初めて見る種類ばかり。そこで彼らが一斉に取った行動は、タブレットでさばき方を調べるというものでした。
ROCKETには、学校のルールに従うことや教科書から学ぶことが苦手な子が多いのですが、「自由にやっていいよ」と規制を外されると、逆に正解を探そうとする光景が見られたのでした。
人と異なる道を選ぶなら、答えを安易に探すのではなく、自ら導き出した答えに納得するというプロセスが重要です。自分のやり方を見つけていくことは、答えのない人生の歩き方にも通じます。だからこそ、ROCKETはあえて教科書をなくし、試行錯誤の場を子どもたちに用意してきました。その結果、一人一人の試行錯誤の末に出てくる答えには、一つとして同じものがありませんでした。「答えのない問いに向かう」とは、こういうことなのだろうと思います。
また同じ年、バーチャルネイティブ世代の子どもたちに与えられた別のミッションは「デジタル飯を作れ」でした。これは2・5センチメートル角のさまざまな食材を27個のキューブ型に積み上げて作るもので、調理方法は耐熱容器に入れて電子レンジで3分間温めるだけです。「マインクラフト」が好きな子どもたちは、バーチャルの中で日々キューブを積み上げていますので、さぞ上手に作るだろうと期待を膨らませました。
色合いを気にする子や栄養バランスをとる子などがいる中、奇抜な組み合わせを試みる少年がいました。彼が選んだ組み合わせは、ベーコン、牛肉、チーズ、チョコの4種類。好きなものを選んだようですが、完成した時の惨事を考えれば、本来は実行に移さない方が賢明です。でも、ROCKETはあえてこうした選択を受け入れます。人が選ばない答えの先に、イノベーションがあるかもしれないからです。
何事にも恐れずに進んで行ける場所、それがユニークな子どもたちや閉塞感のある世の中には必要なのです。冷静に考えることも大事ですが、それ以上にユニークさを生かす学びの場には、時として非常識が求められます。
ちなみに、彼が作ったデジタル飯は、大方の予想を裏切って、とてもおいしいものでした。この出来事は私に、大きな驚きと喜びを与えてくれました。