【ほめ方叱り方(5)】レッジョ・エミリア教育の国内外の状況

モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者 島村華子
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『ニューズウィーク』誌で「世界最高峰の教育方法の1つ」と紹介されるなど、レッジョ・エミリア教育は幼児教育の世界標準とされています。現在、世界145カ国で導入されていると言われ、カナダでは各地でレッジョ・エミリア教育の精神が幼児教育に取り入れられるなど、高い認知度を誇ります。日本でも数は少ないですが、インターナショナルスクールなどを中心に、レッジョ・エミリア教育を導入している保育施設は増えてきています。

これだけの認知度・人気を誇るレッジョ・エミリア教育ですが、モンテッソーリ教育と同様、大きく分けて2つの課題があります。1つ目は枠組み不足による不均衡なプログラム、2つ目は文化の違いによる適用の難しさです。

1つ目の枠組み不足については、プログラムの質にばらつきが出ているということです。モンテッソーリ教育と違い、レッジョ・エミリア教育には公式の教員養成機関がありません。興味のある人は、ワークショップやイタリアのレッジョ・エミリア市のスタディツアーなどに参加し、理解を深めていきます。しかし、公認教員資格がないため、教師間での理解度に大きな違いが出ているのが現状です。

さらに、レッジョ・エミリア教育には、規定のカリキュラムがありません。つまり、カリキュラムという枠組みに縛られることなく、それぞれの土地柄や文化に合った教育を提供できるのが最大の長所であり、子どもたちの視点や社会の多様性を尊重するための「哲学」と言えます。しかし、教師が何をするべきか指標となるカリキュラムが存在しないことが、実践レベルでの混乱を生み、プログラムの質のばらつきにつながっているのです。

2つ目の文化の違いによる適用の難しさですが、国が違えば、「子どものイメージ」や教育に対する価値付け・考え方も異なります。例えば、個人主義的社会では、意見の主張や自立が重視される一方、集団主義的社会では民主主義的意思決定や協調性が大事にされます。

レッジョ・エミリア教育は、どちらかというと後者の考え方を重んじています。また、学びは個人ベースであるというよりも、社会交流やコミュニティーとの密な関わりによって発生すると捉えています。こういった価値観や考え方の違いが、レッジョ・エミリア教育が他の文化の教育観に適合せず、プログラム導入の障害となっているのです。


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