【個別最適化された学び(5)】枠を外れた青年たちが創る多様な道

株式会社SPACE代表取締役CEO 福本 理恵
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私がROCKETで出会ってきた子どもたちのうち3割くらいは、さまざまな理由から学校になじめない、完全不登校の状態でした。「学校に行くのは当たり前」と捉えられてしまう世の中で、そうでない選択肢を取るのは勇気のいる決断です。しかし、だからこそ、新たな場所で自分の好きなことに没頭する青年たちもいます。今回は、学校の枠を外した彼らの多様な在り方の一部を紹介します。

ROCKETの多様な青年たちの作品群

ロボットが好きなAという青年は、読み書きに困難があります。標識の漢字も読めず、一人で街に出ると漢字の嵐でパニックになってしまうので、移動は誰かの付き添いが必要でした。しかし、読み書きができないことが、彼を「読み書きによらない学び」へと導きました。ロボットの造形は読み書きを重要としません。説明書の図解や動画を見れば、製造工程は学べます。あとは手を動かし、試行錯誤を重ねていくことが血肉になる世界です。Aはそのようにして自分の強みを見つけ、ロボットベンチャーから「君のアイデアがほしい」とオファーが来るほどの腕前へと自分を進化させました。

また、別の青年Bは、ドラマ音楽の作曲家「劇伴作家」を目指しています。ドラマが好きなBは3時間に1曲という驚くべきペースで、曲を作り続けました。ただ、そうして曲のストックが貯まる一方で、それを流してくれるドラマがありません。そこで自ら脚本を書き、カメラを回し、複数の出演者を演じ、監督も行うというまさかの行動に出ました。一人でドラマを作ってしまったのです。ROCKETを密着取材していたテレビのプロデューサーが、Bの制作場面に立ち会った際、その技術力に驚嘆していました。

ROCKETでは、その他にも映像クリエーター、彫り師、絵本作家、政治評論家、音楽家など、自分の好きなことを追求し、それで身を立てていこうとする青年たちが、果敢に挑戦を続けています。これらの夢を実現するためのマニュアルはありません。だからこそ、彼らは寝食を忘れるほどに自分の「好き」を追求し、一心に模索します。そこに整った道はありませんし、歩き始めた者だけが自分の道を開拓していけるのです。

不登校が増加する中でこのような生き方を見つけ、そうした勇気を持つ若者が増えていくことは、もはや今の日本にとって大いなる希望と言えます。高い志と不屈の精神だけで、全てを自ら切り拓けというのはあまりに厳しい話です。また、認知的な偏りやこだわりの強さ故、一般的な仕事にはなかなかつながらないケースもあります。だからこそ、突き抜けて飛び立とうとする「ロケットな青年たち」が、より広い可能性の宇宙を飛び回るためには、それらを受け止める社会的インフラと多様な学びの実現、そして受け皿としての社会全体の意識の変容と成熟が必須なのです。


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