【教室と世界をつなぐ「探求」(1)】17年前に探究学習を始める

株式会社教育と探求社 代表取締役社長 宮地 勘司
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私は、社会に出てからの人生の前半を新聞人として、後半を教育会社の経営者として過ごしてきた。新聞の仕事は17年、教育の仕事も今年でちょうど17年目となるが、どちらもとてもやりがいのある仕事だった。新聞社では社会の最前線で起こることをいち早く知ることができ、また世の中の新たな潮流を捉え、企画として世の中に発信していくこともできた。時代とともに生きているダイナミズムを感じることができる仕事だった。

企業探究コースと進路探究コースのワークブック

しかし、2004年、新聞社を退社して、教育と探求社という会社をつくり起業した。いわゆる「ゆとり教育」がスタートした直後のことだ。当時、現場の先生方は、総合学習などにおいて子供が主体的に考える実践をつくり出さねばならず、戸惑いや躊躇を感じていた。私は、新聞社で得た知識と経験、ネットワークを活かして、そんな先生方の支援ができるのではないかと考えたのだった。

私自身は地方の進学校の出身だが、当時は勉強が好きでも得意でもなかった。新たな物事の見方や考え方を知ること、世の中の本質や人生の意味について考えることは好きだったが、学校の授業は予定調和的で刺激が少なく、退屈に感じられることが多かった。それ故、新聞社に就職したのだが、いつしか躍動する現実社会の息吹を教室に吹き込むことで、子どもたちが生き生きと学ぶことができるのではないか、それこそ自分がやるべき仕事ではないかと思うようになった。二人の子と住宅ローンを抱えた厄年の起業に恐れがなかったと言えば嘘になるが、残りの人生を教育に捧げることが自らの天命に思えた。

起業して半年後の2005年春、教育と探求社のメインプログラム「クエストエデュケーション(以下、クエスト)」を世に出すことができた。「現実社会を教室に」をテーマに二つの探究コースを全国の中学・高校に届けた。一つは、日立製作所や全日空、野村證券など、教室にいながら実在する企業にインターンをする「企業探究コース」。もう一つは、日経のコラム「私の履歴書」を執筆した本田宗一郎、安藤百福、小倉昌男などの先人の生きた軌跡をもとに自らの生き方、働き方を考える「進路探究コース」。それから17年、導入校は今年度だけで265校となり、年間約4万5千人の生徒が、学校の授業でクエストに取り組んでいる(2021年4月現在)。

今回の学習指導要領改訂で、「探究」という教科が新設された。現場は今、その準備と対応に追われている。この連載が多くの先生方の探究実践の役に立てれば幸いである。

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【プロフィール】

宮地勘司(みやじ・かんじ) 1963年長崎県生まれ。立教大学社会学部卒業後、日本経済新聞社に入社。自らの起案により、日経社内に教育開発室をつくり、現実社会と教室をつなぐ教育事業の開発に取り組む。2004年日経を退社し、株式会社教育と探求社を設立。17年間にわたりアクティブ・ラーニング型の学習プログラム「クエストエデュケーション」を全国の中学・高校に提供してきた。現在、年間約270校、4万人の中高生が同プログラムに取り組んでいる。2015年、先生の学びを支援するために一般社団法人ティーチャーズ・イニシアティブを設立。生徒を中心とした生成的な学びの実践や生き生きとした学校づくりをサポートしている。著書に『探求のススメ-教室と世界をつなぐ学び』。