【個別最適化された学び(7)】「個才の見える化」で変わる教育

株式会社SPACE代表取締役CEO 福本 理恵
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SPACEでは個別最適な学びを実現するために、「個才」を見える化させる必要があると考えています。2019年から始まったGIGAスクール構想により、21年度にはほとんどの義務教育段階の学校において1人1台端末環境での学習が始まります。学校ではAIドリルが導入され、習熟度に合わせて学習内容やペースを調整できます。先生が全児童生徒に同じ内容を伝達していた従来型の授業と比較すると、この授業スタイルは一人一人の習熟状況に沿って内容を伝達でき、学習者に寄り添った学びが実現するものと感じます。

特に顕著な事例が東京都千代田区立麹町中学校です。AIドリル教材「Qubena(キュビナ)」を活用した授業により、授業時間が半分に短縮され、空いた時間を創造的な学習に割り当てられるようになりました。算数や数学のように体系化され、正解のある教科についてはAIドリル教材が最適です。

しかし、ROCKETの子どもたちのように認知的な偏りがあったり、興味関心が偏っていたりする場合には、習熟度という切り口では個別最適化が図れません。この場合は、一人一人がどのような認知的特性を持って環境と相互作用しているかという観点や、物事を考えて行動に移すときの思考の癖、すなわち思考スタイルにどんな特徴があるのかを考慮しなければなりません。

ROCKETの登録者1236人(19年12月18日時点)のうち28・5%が「読み書きに困難があり、学力を適切に評価されない」と回答しました。この数字は文科省が発表した、通常学級内で「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒6・5%の4倍以上です(文科省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」12年)。

ここから推察されるのは、読み書き困難のような認知的な特性から生じる環境とのミスマッチは、学習や行動面での難しさを引き起こす可能性があるということです。実際、「会話だと言葉が瞬時に消えてしまうために、何を言われているのか分からなくなるが、文章で書いてあると理解できる」と言うROCKETの参加者もいました。このことからも習熟度だけでなく、その背景にある認知特性や思考スタイル、興味関心といった個人の特性や素養も含めた力(個才)を見える化した上で個別最適化を進めていくことが、真に学習者を主体とした学びを実現する鍵になると考えています。


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