【個別最適化された学び(8)】多様なゴールのための個別最適化

株式会社SPACE代表取締役CEO 福本 理恵
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SPACEでは、2020年度の経産省「未来の教室」実証事業の中で、学習者の認知特性と学習スタイルや学習効果についてのアンケートを実施しました。

「未来の教室」実証事業での「魚の進化を追え!」というプログラムの様子

登校状況の異なる3グループ(登校しているグループ=A、不登校傾向のグループ=B、オルタナティブな学び方をしているアクティブな不登校のグループ=C)の児童生徒33人に、まずは自分が得意とする情報処理の方法を選んでもらい、認知特性の傾向を見ました。情報の入力では「視覚・聴覚・体感覚」の3つ、情報の発信では「話す・書く・描く・読む」の4つから選んでもらいました。これらを比較すると、Aグループと比べて、BやCのグループは、体を使いながら理解する「体感覚」を好み、「描く」というアウトプットを得意とする割合が多いことが分かりました。学校の授業は「黒板の文字を見ながら、先生の話を聞く」ことが主なので、不登校傾向の子どもたちの認知特性を生かせる場が少なく、それが理由で学校になじめていない可能性も考えられます。

次に、学習スタイルと学習効果が、登校状態で異なるかを調べました。具体的に「学校の授業・動画視聴・活動から探究するライブ」という3つの学習スタイルのうち、合っているものと、学習効果が高いものを選んでもらいました。その結果、Aグループは他の2グループよりも学校の授業を選ぶ割合が高く、Bグループは動画視聴、Cグループはライブを選ぶ傾向が見られました。さらに認知特性ごとに調べた結果、視覚優位だと動画視聴を選びやすく、体感覚優位だとライブでの学習効果が高いと感じる割合が多かったのです。以上のことから、認知特性に応じた多様な学習スタイルでの教育機会を保障できれば、より個人にフィットした学びが可能になると分かりました。

また、この実証事業では、不登校傾向のある子ども一人一人の特性や興味関心、思考スタイルを心理尺度で把握し、その結果をポートフォリオとして返却しました。すると、「自分に合った学習の進め方が見えてきた」というポジティブな声が、生徒本人だけでなく教員や保護者からも寄せられ、さらには教員が子どもの興味関心と思考スタイルをベースとした個別計画を作り、フォローする動きも生まれています。今ある姿が可視化され、無理なくできる目標と学習環境を設定することで、子ども自身が学びを作る主体者になります。それと同時に、周囲の大人は個々に適した学び方を受容し、成績以外の観点から評価ができるので、子どもたちの可能性をさらに引き出せるのではないかと期待しています。個人の特性と環境をマッチングさせることで、習熟度だけでない多様なゴールの個別最適化を実現していきたいと考えています。


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