【OECD Education2030(2)】「OECD未来の教育とスキル2030」プロジェクト誕生のきっかけ

田熊美保(OECD教育スキル局シニア政策アナリスト)
村尾崇(スポーツ庁競技スポーツ課長、元OECD日本政府代表部参事官)
鈴木文孝(OECD教育スキル局政策アナリスト)
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日本の教育関係者の方から、「OECDの分析や提言は、アングロサクソン(英国や米国)の理論を基にした分析でしょう」と言われることが、よくあります。しかし、「OECD未来の教育とスキル2030」(以下、E2030)は、英国や米国以外のOECD加盟国と途上国を含むパートナー国が、広く経験・知見を持ち寄り、より良い未来を創るための教育ビジョンを共創しているプロジェクトです。その中で、日本は、E2030誕生の国際議論に寄与した点で、大きな役割を担っています。

今回は、その背景とも言える「OECD東北スクール」をご紹介します。具体的な取り組みの中身については第4回でご紹介しますが、一言で表すと、東日本大震災からの復興の未来を子供たちが本来持っている「創造力」に委ねたプロジェクトでした。

OECDと文科省が協力して、事務局を担っていただいた福島大学を支援し、岩手・宮城・福島の中高生約100人が、自らの地域の未来を自らの発想で描き、創造するプロセスを体験しました。理論の裏付けは、第二次世界大戦後の町の復興の中心に、子供一人一人の声・物語・創造性を据えて未来を描いたイタリアのレッジョ・エミリアの「プロジェクト活動」、そしてOECDキー・コンピテンシーを基に、「創造的教育」を生み出す仮説として、文献調査から「10の異質性」をプロジェクトに紡ぎました。具体的に、(1)被災地内でも異なる被災体験を持つ生徒同士の出会い(2)被災地(東北)と非被災地(東北以外)の生徒の交わり(3)異学年の生徒の協働(4)異なる性別(5)海外とのフラットな協働(6)生徒と教師の対等な協働(7)多様なコミュニケーションツールの使用(8)政策・研究・現場の交差(9)産官学連携、(10)異なる省庁連携・学際的アプローチーーです。

これらの異質な要素が出会うネットワークから、スタンフォード大教授のグラノヴェッターの説く「弱い紐帯の強さ」(学校の仲間など強いつながりよりも、緩いつながりから新しいアイデアや情報がもたらされること)は、ある程度観察されたものの、同時に教育イノベーションの支障となる制度や文化も明らかになりました。そのため、東北スクールは「日本のためか、他国のためか」「グローバルか、ローカルか」という二項対立の議論ではなく、「逆境に立たされている子供に必要な革新的な教育の実現を試みる事業は、人類普遍の価値がある、国際連帯が必要である、対岸の火事ではない」という認識の下、日本の現場の取り組みと公教育の力が評価され、E2030の国際議論の基盤をつくりました。

(第2回担当=田熊美保)

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