【OECD Education2030(3)】教育政策とOECD

田熊美保(OECD教育スキル局シニア政策アナリスト)
村尾崇(スポーツ庁競技スポーツ課長、元OECD日本政府代表部参事官)
鈴木文孝(OECD教育スキル局政策アナリスト)
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前回まで、OECDの田熊美保シニア政策アナリストから「OECD未来の教育とスキル2030」(以下、E2030)プロジェクト誕生の背景などについて紹介がありました。教育政策とOECDの関わりとしては、15歳時点の学習到達度を測定しているPISA(生徒の学習到達度調査)は、加盟国以外にも多くの参加国を集め、各国の教育政策に大きな影響を与えている国際調査として著名です。しかし、そもそもなぜOECDが教育の調査をするのか、疑問に思われている方もいるかもしれません。

OECDはその名称から、経済分野の国際機関というイメージが持たれがちですが、実際には経済や開発だけでなく、教育や医療、雇用なども含む幅広い分野をカバーし、各国共通の問題について解決策を探るために協働する場となっています。教育分野では、PISA以外にも、学校の教員に関して総合的に調査するTALIS(国際教員指導環境調査)など、多様なデータ収集・分析などを行っています。

OECD加盟国は、長く先進国中心の24カ国で構成されていましたが、世界経済における先進国の比重が低下する中、現在の加盟国は38カ国に増え、さらに非加盟国ながら「キー・パートナー」として特別な位置付けの新興国(ブラジル、インド、インドネシア、中国、南アフリカ)も存在します。なお、各加盟国が国際機関OECDの主体であり、本部のあるパリには各国の在外公館である政府代表部(大使館に相当)が置かれています。筆者も、その日本政府代表部での勤務経験がありますが、各国政府職員がOECDに自国の考え方を持ち込むべく調整しています。これは、OECDで策定するルールや考え方が、国際的に影響を及ぼすためです。一方で、OECD事務局職員は、出身国はあっても、各国からは中立の立場で職務に当たる必要があります。OECD各国政府代表部職員とOECD事務局職員は、全く別の立場なのです。

OECDの強みの一つは、多くの国からの客観的なデータ収集や比較分析にあります。教育は個人的体験などを基に議論されやすい面もあり、OECDの各国比較データや分析から学び、エビデンスを踏まえた(evidence based)教育政策の立案のために活用することが重要です。同時に、文化的背景などを踏まえ、国により教育の在り方は大きく異なるため、ともすれば欧州や米国の教育が先進的と考えられがちな中で、高い資質の教員の実践に支えられた日本の教育の良い点について、対外発信力が強いOECDを「利用」して国際的に発信していくことも日本にとっては大事であり、世界に対する貢献にもなり得ます。

(第3回担当=村尾崇)

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