【教室と世界をつなぐ「探求」(7)】クエストで教師の教育観が変わる

株式会社教育と探求社 代表取締役社長 宮地 勘司
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クエストエデュケーションの導入校は、今年度のスタート時点で265校となった。1校あたり仮に4人の先生が関わるとしたら、年間で1000人を超える先生がクエストの探究学習に取り組むことになる。

教師はファシリテーターとして生徒と関わる

担当する先生には毎年、教育と探求社のスタッフが事前研修を行っている。研修ではプログラムの構成や狙いについて説明するほか、実際に生徒が取り組むプログラムの一部を先生にも体験してもらい、そこで何が起こるか、どんな気持ちになるか、感じ取ってもらう。通常通りの授業であれば先生もかつて生徒として体験しているが、アクティブ・ラーニングや探究型の授業を受けた経験を持つ先生はそう多くない。何にワクワクするのか、どこでつまずくのか、自身の気持ちの遷移を見つめ、生徒がどんな気持ちで取り組むのかイメージしてもらう。

クエストでは、17年前のスタート時から「先生はファシリテーター」と位置付けている。「正解のない学び」においては、先生も正解を持っていない。先生が教え導くのではなく、生徒それぞれが自分の正解を生み出すことを支援するのだ。そのためには、先生が「知の番人」という立場を降りて「知へ向かう生徒の伴走者」となる必要がある。

通常の教科であれば、教室の中では恐らく、先生が圧倒的に知識を持っている。これまでの授業では、それをどれだけ分かりやすく工夫して伝えられるか、どれだけ歩留まり高く生徒の記憶に残せるかが勝負であった。しかし、探究型の授業においては教えるべき正解などないので、生徒から出てくる答えを待つしかない。先生は生徒の傍らにいて、気持ちを理解し、できたことを承認し、励まし、応援していくことが求められる。

これがうまくいくと教室には、これまでにない変化が起こり始める。あまり目立たなかった生徒や、勉強が得意でなかった生徒も、主体的に発言するようになる。生徒たちはこの世にたった一つの正解なんてないことを知り、失敗を恐れずに自分の意見を言うようになる。そして、自分たちで正解を生み出す喜びを知るようになる。

これを体験すると、先生の教育観も変わり始める。自らの内なる「正解主義」に揺らぎが生じ、通常の教科の授業も変化する。教え込みを超えて、生徒と共に探究するという意識を持つようになり、その結果あらゆるところで生徒主体の生成的な学びが起こり始める。クエストの授業は週に1回しかなくとも、先生の教育観が更新されれば、学校全体に大きな変化が起こる。

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