【教室と世界をつなぐ「探求」(8)】教師が学ぶ場「ティーチャーズ・イニシアティブ」

株式会社教育と探求社 代表取締役社長 宮地 勘司
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前回、先生の教育観が変われば学校が変わるという話を書いた。今回は、その部分をさらに深めて話をしたい。私は2015年に「ティーチャーズ・イニシアティブ」(以下TI)という団体を多くの皆さんの協力の下、設立した。先生たちが主体的に学び、学校を超えてつながり合うことで、教育現場に大きな変化を起こせると考えてのことだ。

クエストを10年続ける中で幾度となく学校を訪問して授業に参加し、先生の持つ価値観や信条が生徒に与える影響の大きさを痛感してきた。例えば、クエストの同じステップの授業をやっていても、先生によってクラスの様相がかなり異なる。先生が授業で話す内容(コンテンツ)より、むしろその先生の生き様や価値観から生まれる文脈(コンテクスト)のようなものが、より生徒に染み入っていると感じた。そして、先生の人間観、教育観が広がれば、それだけで生徒の学びは豊かなものになると思った。

TIが先生に提供する「21世紀ティーチャーズプログラム」は、2泊3日の合宿から始まる8カ月のプログラムだ。大自然の中で行われる合宿は、それぞれが教師になった原点を振り返ることから始まる。その後、シナリオプランニングという手法を使って20年後の未来を展望し、その中で自分はどう振る舞うのか、より良い未来のために今の自分にできることは何かを探究する。最後は、2人組で自然の中を散策しながら、互いの教育におけるリーダーシップについて語り合う。

ここでは、授業のやり方などは一切教えない。システム思考やU理論、ダイアログなど組織開発的な手法を活用しながら、先生自身の中にある願いや教育についての深い思いをそれぞれが掘り起こす。合宿後は小グループでの学びの実践的活動となる。それぞれが学びの場を設計し、互いに体験し合い、フィードバックしながら自身の教室や学校で生かせる知として育んでいく。

プログラムに参加した先生たちの変容は、すさまじいものがある。自分自身の内なる規範に向き合い、「べき論」を手放すことで生徒との関係性を劇的に変えていった先生。誰一人取り残さないクラスづくりをすることで、クラス平均点を他のクラスよりも10点以上高くした先生。学校の未来を考えるワークショップを職員室に導入し、よどんだ空気を変えた先生。どの取り組みも極めて本質的である。

TIのプログラム受講者は、累計で500人を超えた。今後は卒業生たちが連携し、さらに大きなソーシャルインパクトを出していくことを期待したい。

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