【OECD Education2030(5)】「OECD未来の教育とスキル2030」プロジェクトの誕生

田熊美保(OECD教育スキル局シニア政策アナリスト)
村尾崇(スポーツ庁競技スポーツ課長、元OECD日本政府代表部参事官)
鈴木文孝(OECD教育スキル局政策アナリスト)
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2012年から実施された日本とOECD連携の復興教育プロジェクト「OECD東北スクール」を契機とし、OECDは15年、変化の激しい時代の中で「2030年に向けて育成していかなければいけないスキルは何か」を考える際に参考になる共通のフレームワークを検討する「OECD未来の教育とスキル2030」(以下、E2030)プロジェクトを実質的に開始しました。プロジェクトの詳細は次回以降に譲り、ここでは誕生の経緯を紹介します。

多様な背景、異なる事情を持つ各国が集まって国際的な枠組みを検討する際、日本の事情も踏まえた設計が望ましいことは言うまでもありません。日本の場合、これまでOECDの出す方向性を解釈し、国内に発信する形が多かったように思いますが、E2030では「OECD東北スクール」からの経緯も踏まえ、研究者や教師、生徒も参画しながら日本としてのインプットをしっかりした上で、枠組みを一緒に作っていく方向にかじを切りました。このため、15年4月のOECD教育政策委員会におけるOECD事務局からの正式なプロジェクト提案に、日本はいち早く賛同するとともに、事務局とも連携しつつ、関心を示す各国に対して理解が得られるよう働き掛けを行いました。最終的には意思決定機関である教育政策委員会において各国の賛同を得られないと、OECD事業として成立しないからです。

自国の国益を考える各国と、各国のバランスを取る必要があるOECD事務局は、立場が常に一致するわけではありませんが、当時、できる限り参加国を増やして意義あるプロジェクトにしたいという点で、日本との認識は一致していました。同年12月には、日本・OECD共催でE2030をテーマとした国際会議を東京で開催することとしました。

こうした努力もあり、E2030は加盟国の優先順位付けで高い支持を獲得し、翌16年4月の教育政策委員会において、17年以降の正式事業として承認されるとともに、日本は運営に実質的影響を与え得る副議長国の地位を確保しました。E2030を核として日本はOECDとの協力を深化させ、(1)文科省とOECDのハイレベル政策対話、(2)東京学芸大学を拠点としたOECDとの共同研究に加え、(3)現場(grassroots)の実践を反映させるため、OECDと連携しその名を冠することが認められた、生徒たちが海外や地域・企業などの多様な主体と協働しながらプロジェクト学習を行う産学コンソーシアム(Japan Innovative Schools Network supported by OECD)も組織されました。

(第5回担当=村尾崇)

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