【教室と世界をつなぐ「探求」(9)】デンマークの教育と探求(前篇)

株式会社教育と探求社 代表取締役社長 宮地 勘司
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数年前、教育視察でデンマークを訪れた。未来教育会議(miraikk.jp)という企業人や教育関係者から成るコンソーシアムで、現地の幼稚園、小学校、高校、教員養成大学、その他の施設を訪問した。そこで見たものはどれも、学習者を真ん中に置いた素晴らしい学びの場だった。私は、クエストを通じて実現したいと思っていた学びの姿が、すでに同じ地球上にあることに心震えた。本稿では、森の幼稚園、小学校、自由高校について紹介したい。

まず驚いたのが森の幼稚園だ。森の中で幼児たちが思い思いに遊んでいる。ルールのない自由な場で、社会的・文化的にどのように自己を表現するのかを学ぶという。高く積まれたわらの山を登る子もいれば、ロープにぶら下がりターザン遊びに興じる子もいる。ノミで黙々と木を掘る子もいる。周囲には大人もいるが、自らのものづくりに熱中していて子供たちの安全配慮をしている気配は特にない。

感嘆したのは園長先生の言葉だ。「ここでは子供たちは毎日小さなリスクを犯すのです。登れなかった山が登れるようになったり、使えなかった道具が使えるようになったり、自分の限界に少しずつ挑戦する。そのことを通じて、自分が持っている価値を見つけ出し、他の人にもそのような価値があることを認め合う。

異なる意見の人同士が楽しく共存するためにはどうすればいいのかを自分で考えるようになる。ここは民主主義を学ぶ場なのです」。教科書から学ぶ民主主義ではなく、体験を通して民主主義を学び、自らの血肉とする。頭を殴られたような感覚を覚えた。

小学校では、6年生の「自然と技術」という授業を参観した。理科と社会を合わせたような教科だ。この日のテーマはエネルギー。自分たちが使うエネルギーをどのように調達して、どのように使っているのか、新たな可能性についても考える。教室前方のスクリーンには、デンマークの発電状況が映し出されている。火力、風力、自然エネルギーの発電量が刻一刻と数字で表され、さらにその電力を近隣諸国と融通し合っている様子も見える。

教室の中には、その他にも幾つかのグループがあり、レモンを使った発電装置を作ったり、扇風機を分解したり、家電による消費電力の違いを調べたりしている。どの子も没頭していて楽しそうだ。グループのテーマは週替りで移動していく。聞けば、これらの授業は全て、担当の教師が自分で考えたものだという。大変ではないかと問うとこんな答えが返ってきた。「え、どうして?だってそれこそが教師の醍醐味(だいごみ)でしょ!」。デンマークには、日本のように細かく組み上げられた学習指導要領のようなものはない。大まかなテーマが設定されていて、授業は教師の創意工夫によってつくられる。そう語る教師の顔は輝いていた。

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