【発達障害の早期支援(6)】「信頼関係」をどう築くか ②具体的な声掛けを考える

ADDS共同代表 熊仁美
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前回は、「信頼関係」について、ABAに基づいた分析を行いました。今回は、具体的な声掛けや指示の仕方について、前回紹介した事例に基づいて紹介していきます。

応用行動分析学(ABA)に学ぶ信頼関係を築く関わり

その事例では以前、「授業中に教室にいなさい」「体育館に行ってはいけません」など、子供が「したくないこと」「できていないこと」を中心に伝えていました。しかし、悪化した関係を改善するために、まずは子供自身が「したいこと」を、あえて先回りして指示したのです。「授業が難しいときは、体育館に行っていいからね」と事前に伝え、実際に体育館に行ったときは、「ちゃんと自分で考えて移動できてすごいよ」と褒めました。

また、この子は「授業中に無断で出て行く」わけですから、逆に考えると、途中までは教室にいることになります。そのため、「授業の最初は、教室にいてね」と、すでにできていることをあえて指示することで、その子は指示に従うことができ、先生は「最初は教室にいてくれたね。ありがとう」と褒めることができるようになりました。

そうして、したいこと、できていることを先回りして指示できるようになったら、次は「少し頑張れば確実に達成できること」を指示します。例えば、「教室を出るときは、先生に分かるように、そっとペンをくるりと回してね」と事前に約束をしておきます。すると、その子は実際にペンを回してから体育館に行くようになりました。教室から出て行ってしまう事実は変わりませんが、先生は「ちゃんと行く前に知らせてくれてありがとう」と褒めることができます。

このように、「教室にいなければ駄目」というルールを押し付けるのではなく、確実に達成できることからこまめに指示し、達成できたことを褒めていきます。これを繰り返していくと、子供は自然と「先生の言うことを聞いたら、良いことがあった」という経験を積むことができます。これがまさに、信頼関係となっていくのです。その子は「先生の指示を聞く」行動が増えていく中で、例えば「開始10分は教室にいよう」など、少しずつステップアップしていくことができました。

このように信頼関係を結べる人の存在は、それだけで子供の成長につながると言っても過言ではありません。「言うことを聞いてくれない…」と困ったら、まずはできていること、得意なこと、したいことから、指示するよう心掛けてみてはいかがでしょうか。

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