【OECD Education2030(6)】「OECDラーニング・コンパス」(前編)

田熊美保(OECD教育スキル局シニア政策アナリスト)
村尾崇(スポーツ庁競技スポーツ課長、元OECD日本政府代表部参事官)
鈴木文孝(OECD教育スキル局政策アナリスト)
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前回は、「OECD未来の教育とスキル2030」(以下、E2030)プロジェクトの誕生について、当時、日本政府の立場から深く関与された、村尾崇・元OECD日本政府代表部参事官からご紹介がありました。今回からは、E2030の内容についてご紹介します。

E2030には、新たなコンセプトの創造(Concept making)と、国際的な比較分析(International Comparative Analysis)という2つの柱があります。前者として2030年により良い未来を創るために子供たちに必要なコンピテンシーを、後者としてカリキュラムの再設計(Curriculum Redesign)をテーマとして掲げました。前者については、「子供たちが2030年により良い未来を創るために必要な力は何か」という教育の本質的な問いへの答えが模索されました。後者については、各国のカリキュラムの設計が、よりエビデンスに基づいた体系的なものとなるよう、各国の教育政策を支援するために設定されました。

この本質的な問いに対し、政府関係者のみならず、研究者、教師、財団やNGO、さらに学生・生徒といったさまざまな関係者が議論を重ね、2019年5月に「OECDラーニング・コンパス」を公表しました。予測不可能な社会を自分自身で生き抜いていくことは、コンパスを片手に、道なき海を航海することに似ているため、コンパスという比喩が用いられました。昨年からのコロナ禍により、私たちはまさに予測不可能な状況を生きているわけで、このような状況だからこそ、このラーニング・コンパスを活用していただきたいと思います。

このラーニング・コンパスでは、個人と社会と地球のウェルビーイング(Well―being)の実現を学びの目標として掲げ、コンピテンシーは、知識、スキル、態度、価値を含む包括的概念として定義しました。また、重要な概念として、エージェンシー(Agency)という概念を提唱しています。次回は、このエージェンシーについてご紹介します。(なお、本連載には、筆者個人の見解が含まれ、日本語訳はいずれも仮訳です)

〈参考〉OECD「OECD Learning Compass 2030 Concept Notes

(第6回担当=鈴木文孝)

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