【OECD Education2030(8)】OECDのカリキュラム報告書と日本への示唆(前編)

田熊美保(OECD教育スキル局シニア政策アナリスト)
村尾崇(スポーツ庁競技スポーツ課長、元OECD日本政府代表部参事官)
鈴木文孝(OECD教育スキル局政策アナリスト)
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今回からは、「OECD未来の教育とスキル2030」プロジェクトの2つの柱のうち、カリキュラムに関する国際的な比較分析についてご紹介します。

ここでは、日本を含むプロジェクト参加国が共通して抱える、カリキュラムデザインにおけるリアルな課題である六つの政策優先課題が、テーマとして設定されました。国内で課題として意識されていることは、他の国々でも課題となっていることが多く、その解決に向けた対話や協働のプラットフォームになることは、OECDの存在意義でもあります。現時点で、3冊(3テーマ分)が公表されています。残りの3冊は今年から来年に公表予定です。さらに、教科別国際比較は、保健体育に関する報告書が既に公表され、今後、数学に関する報告書を公表予定です。

ここでは、昨年11月に公表された「今の生徒の学びが未来を左右する:21世紀型カリキュラムに向けて」の内容を簡単にご紹介します。現在、国際化の加速と技術の進展により、世界の国々や学校は21世紀型カリキュラムへ移行しています。21世紀型カリキュラムには幾つかの側面があります。日本のGIGAスクール構想に当たる「デジタルカリキュラム」、日本の個別最適化の議論を含む「パーソナライズされたカリキュラム」、日本の教科横断や資質・能力ベースに当たる「クロスカリキュラムとコンピテンシーに基づくカリキュラム」、そして、日本のカリキュラム・マネジメントの議論を含む「柔軟なカリキュラム」です。

これらの実現は、一夜にして成し得るものではありません。認識や実施にタイムラグが生じることが常ですし、さまざまな改革が同時になされることで、現場が疲弊している事例も報告されています。本報告書では、教師の未知への恐れを過小評価せず、教師の失敗を許容すること、カリキュラムを漸進的に改革する必要性を認識すること、現場の改革疲れを回避することなどが各国の教訓として掲げられています。

日本の文脈で捉えた場合、減点主義から脱却し、一定程度の失敗を許容する社会への変革はとても重要だと思います。失敗を過度に恐れていては、イノベーションが生まれないからです。本来、授業は専門職である教師の先生方の創意と工夫による創造的な営みであり、新しいカリキュラムを導入する場合、時に失敗も起こり得ます。そこから、新しいものが生まれるのではないでしょうか。

〈参考文献〉OECD 「Making Physical Education Dynamic and Inclusive for 2030」(https://www.oecd.org/education/2030-project/contact/Making_Physical_Education_Dynamic_and_Inclusive_for_2030.pdf)、「What Students Learn Matters: Towards a 21st century curriculum」(https://www.oecd-ilibrary.org/education/what-students-learn-matters_d86d4d9a-en?_ga=2.243105602.1930215321.1624568623-1040847582.1602684811)

(第8回担当=鈴木文孝)

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