【ICT×学び合い(9)】今まで得た知識を整理する

HILLOCK初等部カリキュラムディレクター 五木田洋平
この連載の一覧

今回は、振り返りの実践について紹介します。私がこれまで見てきたクラスでは、日々の授業や宿題、テストなどで間違えた問題や難しかった問題の解説を「スクールタクト」に保存していました。自分一人では解けない問題は、過去の「振り返り保管庫」を見ながら解いてよいということを、クラスのルールとしていたのです。

「振り返り保管庫」の目的は、未知の課題を解く際に今までの知識、技術に立ち戻る習慣を付けること、そして今まで得た知識を整理することです。そうすることで、自立した学習者としての姿勢を身に付けられると考えています。

新しい物事を学ぶとき、意識するべきことは「既知から未知」という考え方です。新しいこと(未知)を学ぶ際、人間は既に知っていること(既知)を足掛かりに学びます。つまり、重要な論点は「どうやって新しいことを覚えさせるか」より、学習者に「今の自分が知っていること」を洗い出させたり、整理させたりすることなのです。

振り返りを残しておくことは、自分が得ている知識を整理することにつながります。この考え方はICTが導入される前からあったように思いますが、ICTとの親和性は非常に高いものだと考えています。

「振り返り保管庫」では、他の子供のシートを見ることや、そこにコメントをすることもできます。そうすることで、子供たちは「自分では理解しているつもりだが、うまく言葉にならない」といった定着間際の知識を言葉にするヒントを得ます。

振り返りの時間を取ることで、授業に遅れが出ることを心配される方もいます。しかしながら、この実践を通じて、冒頭に挙げた「未知の課題を解く際に今までの知識、技術に立ち戻る習慣を付けること」「今まで得た知識を整理すること」が図られ、子供たちはより一層、理解力や表現力が強まった感触があります。

子供たち自身に理解力や表現力が付くと、「自分で学び、自分で習得すること」と「自分一人では分からないものを整理して周りの人に聞くこと」ができるようになります。このような行動は、自立した学習者としての作法と言ってもよいでしょう。

学校の役割の一つは、子供に教養を身に付け、自立を促すことだと思います。教養の基になるのは、知識や情報と、その扱いや人との関わり方だと考えます。ICTはまさに「知識や情報と、その扱いや人との関わり方」に影響を与える道具として、これからより重要度を増していくでしょう。ある意味、ICTをうまくコントロールすることは、自立を促すことにつながるわけです。

この連載の一覧