【発達障害の早期支援(10)】GIGAスクール構想が目指すもの―総特別支援教育時代の到来となるか

ADDS共同代表 熊仁美
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2021年、GIGAスクール構想により1人1台のICT端末整備が実現しました。文部科学大臣のメッセージには、「一人一人に個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現」と記されています。今回は、教育の電子化の未来を特別支援教育の観点から考えてみたいと思います。

療育支援アプリAI-PACの例

諸外国の発達支援研究では、幼少期の「発達」を俯瞰し、詳細な行動レベルに分けたカリキュラムが開発されてきました。筆者が所属する法人では、それらを再構成した「発達俯瞰図」と、記録蓄積機能を搭載した療育アプリ「AI―PAC」を軸に、発達支援を行っています。

これらを活用して個人ごとに発達の評価を蓄積していくことで、得意・不得意が可視化され、特性や到達度に合った支援提供が当たり前にできるようになります。記録が蓄積されることで、個人の学習プロセスを線で捉え、事前かつ予防的に支援することが可能となったわけです。対人支援領域で電子化を進める最も大きな意義は、この「個人差を前提とした予防的支援」の実現だと私は思います。

一般的に、対人支援では問題が起きてからの事後対応になりがちです。学校教育では「テストの点数が悪かったら補習」などの例が挙げられます。こうした事後対応が多いのは、個人の学びをテストなどにより点数で評価することしかしてこなかったことの影響が大きいものと思います。

電子化により、学習のプロセスを可視化し、線で捉えることができるようになれば、さまざまなことに事前対応できるようになるでしょう。例えば、予防的な補習の実施や学び方に合わせた教材のマッチングが可能になるかもしれません。そうすると、子供たちは自然と「エラーレスラーニング」で学んでいけるようになります。

現状のGIGAスクール構想では、特別支援教育の対象となる子供たちへの活用法について、十分に議論されているとは言い難い状況です。個別最適化された学びの「実践の知」は、特別支援教育に集約されていると言っても過言ではないので、今後はより対象を広げた上での議論が求められます。電子化政策が「学びの個別最適化」に資するものとして進めば、「教育」と「特別支援教育」の境目は徐々になくなり、「総特別支援教育時代」と言えるような未来の到来もあり得るでしょう。そうした未来に少しでも貢献できるよう、筆者も地道に実践を積み上げていきたいと思っています。

最後に、発達障害の概念が必要ない社会に向けて、教育のさらなる発展を願い、本連載を終えたいと思います。お読みくださった全ての方に、心より感謝を申し上げます。

(おわり)

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