【OECD Education2030(10)】これからのOECD・Education2030プロジェクト

田熊美保(OECD教育スキル局シニア政策アナリスト)
村尾崇(スポーツ庁競技スポーツ課長、元OECD日本政府代表部参事官)
鈴木文孝(OECD教育スキル局政策アナリスト)
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第6回で「OECD未来の教育とスキル2030」(以下、E2030)プロジェクトの①新たなコンセプトの創造②国際的な比較分析ーーという2つの柱について説明しました。

現在①では「OECDラーニング・コンパス」と対となる「ティーチング・コンパス」を共創中です。一人一人の子供がエージェンシーを発揮し、それぞれのありたい姿と社会のあるべき姿を実現できる未来に向かうために、「教師のAgency」「教師のWell―being」「教師の未来に向かうコンピテンシー」を支える制度はどうあるべきなのかなど、教師に関する本質的な問いに対して、さまざまな角度から対話を重ねています。

②では、カリキュラム分析を続けていきます。今年5月に発表した「社会公平性のために格差を乗り越えるカリキュラムの工夫:包摂的なカリキュラムに向けて」では、「誰一人取り残さない社会」の実現のために、「学校は、誰一人取り残していないだろうか」を問い直しました。報告書を基に実施した対話の場では、各国の参加者が社会公平性についての「現実」を直視し、今なお課題が残されていることを再認識する機会となりました。

また、エージェンシーを「個人の尊厳」の側面から捉え直し、画一的なカリキュラムでは拾い切れない「子供の声」を聴くところから始めるデザイン思考も紹介しました。いじめや不登校、長期にわたる病気、住んでいる地域や親の経済状況、外国にルーツを持つ子供や難民の子供、LGBTQIA+、ヤングケアラー、虐待を受けている可能性のある子供など、「しんどさ」は重なり合う場合が少なくありません。これらの課題を学校や教師だけで解決するのは不可能です。こういった子供たちと教師のWell―beingを両立させるためにも、学校・地域・保護者・その他の「社会資源が、子供の未来のために循環する制度」が必要です。

今回、E2030でこだわった点は、各国の現場の先生や子供たちにも参画していただくことです。これは、未来の教育のビジョンを単なる理想論にせず、現場の現実を捉えた上で、マルチステークホルダーの皆さんに「共創」いただきたかったからです。

日本の先生方にはOECDやE2030が「海外から入ってきたもの」としてではなく、「日本の先生方の現場から積み上げられた経験と知恵も反映されたもの」として捉えていただきたいと思います。そして、日本と他国がフラットな形で、現場・研究・政策の交流の場としてE2030でご一緒できれば幸いです。

(おわり)

〈参考文献〉OECD 「Adapting Curriculum to Bridge Equity Gaps: Towards an Inclusive Curriculum

(第10回担当=田熊美保)

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