【新時代の部活動指導(3)】ある戦い

京都橘高校吹奏楽部前顧問・吹奏楽指導者 田中宏幸
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 1995年5月14日の母の日、京都橘(女子)高校の指導者になって初めて、外部でのマーチングの本番が大阪の万博記念公園であった。そのイベントでは隊列を組んでの園内パレードと、お祭り広場での震災復興を願ってのフィールドドリルの出番があり、2・3年生は「橘マーチング」を鼓舞するように、1年生はそれまでの厳しい練習の成果を発揮すべく力いっぱい演奏・演技に取り組んでいた。だが、パレードの途中に大トラブルが発生した。

 私たちの隊列の横をローアングルでスカートの中をのぞき込むように撮影をしながら駆け抜けて行く変態男が現れたのだ。それは「盗撮」というようなおとなしいものではなく、白昼堂々と行われたわいせつ行為であった。生徒たちは悲鳴を上げることすらできずに立ちすくんだ。私はとっさにその中年男の前に立ちはだかり、「何さらすんじゃボケ!いてまうぞアホンダラ!」と、教師にあるまじき言葉を浴びせて退散させた。

 その出来事を翌日、生徒たちがそれぞれなじみの先生に喜んで話したらしく、私と世代が近い先生からそのことが伝えられた。なぜ、その場で「ありがとうございました!」と直接礼を言われないのかは、顧問と生徒の距離感について述べる次回、詳しく語りたい。

 橘で指導をしていた頃、よく「私たちは、変態を連れて歩いているようなもんですわ」と、半ば笑い話的かつ自虐的に、自分たちが本番でしょっちゅう巻き込まれるトラブルについて外部に語っていた。ご存じの方もおられるとは思うが「オレンジの悪魔」と言われている京都橘女子高校のマーチングユニフォームは、ミニスカートだ。もちろん見られても恥ずかしくないように、中にはテニスやバドミントン選手が使用するアンダースコート(後にスパッツに変更)を履いている。とはいえ、ローアングルで写真を撮ったりのぞき込んだりするのは犯罪行為である。先代顧問は、「まぁ、見せてやったらいいじゃないか」と笑い飛ばしていたが、私はそこまで寛大な気持ちにはなれず、悩ましく感じていた。そのうち保護者を動員し、お父さん方にパレードの側面についてもらって、そういったやからを捕まえて警察に突き出してもらうこともしばしばあった。

 保護者の方々は、自分の娘がそういった目に遭わされることを許すまじと、本当によく動いてくださった。しかし、捕えて出るとこへ出ても、「そんな格好でいる方に落ち度がある」と判断されてしまうこともあり、むなしかった。

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