【ユニバーサルデザイン(1)】コロナとオンライン

熊本大学准教授 菊池哲平

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 コロナ禍に揺れた2020年は、オンライン授業元年と言ってもよいでしょう。密になりやすい大学の授業は軒並みオンラインになり、小中学校でも「コロナ休校」と呼ばれた3~5月の長期休校期間中に、全国各地でオンライン授業が行われました。

 オンライン授業になって、授業の在り方は大きく変化しました。教室を離れて自宅からZoomで授業を受けることになり、オンデマンドの場合は自分の好きな時間に何回でも授業動画を視聴できるなど、コロナ前までは考えられなかった世界へと急激に変化しました。

大学への相談件数(「発達障害学生のオンライン授業におけるニーズや困り感に関する調査結果」より。調査代表者:菊池)

 ところで、このような変化は学校での学びにさまざまな困難を抱える発達障害の子どもや大学生に、どのような影響を与えているのでしょうか。

 私たちの研究グループが全国の大学における障害学生支援担当者に対象に実施した「発達障害学生のオンライン授業における困り感やニーズに関する調査」では、28.4%の大学が「発達障害のある学生からの相談が増加している」と回答しています。地域によって状況は異なると思われますが、多くの大学で構内立ち入りが制限された期間があることを考えると、「相談件数が増加した」、あるいは「例年と同程度(57%)」がほとんどを占めることからも、多くの発達障害学生がオンライン授業に何らかの困り感を抱えていることは明らかです。長引くコロナ禍は、これまでの対面型授業でもさまざまな困難を抱えていた発達障害者に「新たな悩み」を生じさせているのです。

 一方で、オンライン授業は発達障害のある学生にポジティブな影響を与えているとも指摘されています。「不安が高く大人数の授業に参加できない学生が、オンラインでは参加できた」「集中力に課題がある学生が、授業動画を複数回視聴したり途中で小休止を入れたりして理解度を高めることができた」など、オンライン授業が発達障害学生の助けになったという報告もありました。やり方次第では、発達障害のある人に有益なこともあると言えるでしょう。

 コロナ禍では各大学が試行錯誤しながらオンライン授業に取り組んだため、発達障害のある学生への配慮が後手に回ってしまった印象があります。これからは、発達障害学生が快適に学習できるようなオンライン授業の在り方を追求していくことが重要であり、それは決して発達障害学生だけでなく、全ての学生にとっても有効な改善になり得ます。すなわち、ユニバーサルデザインの視点から、誰でも快適に学習ができるオンライン授業の改善が必要なのです。

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【プロフィール】

菊池哲平(きくち・てっぺい)専門は特別支援教育、発達臨床心理学。熊本大学大学院教育学研究科特別支援教育講座准教授、日本授業UD学会理事などを務める。著書に『自閉症における自己と他者、そして情動』(ナカニシヤ出版)、『必携発達障害支援ハンドブック』(金剛出版:分担執筆)など。

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