【ICTと子どもの健康(7)】学校教育でなぜ近視対策が必要なのか

東海大学情報通信学部情報メディア学科教授 柴田隆史
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 近視については、メガネやコンタクトレンズを使えば遠くもはっきりと見えるようになるので、大きな問題ではないと思われる人もいるかもしれません。しかし、近視が進行して度数が強くなると目の病気を合併する懸念があるため、特に子どもに対する近視の予防や進行抑制などの対策はとても重要です。日本を含む東南アジアは以前から近視の割合が高いことが知られていますが、近年では近視が世界的な重要課題と捉えられており、2050年には世界人口の約50%が近視になるという予測もされています。

年齢による近視の割合の推移

 日本において、近視の発症は7~8歳頃から増加し、10~12歳にかけて大きく増加することが報告されています(図参照)。まさに小学生の時期に当てはまります。近視の進行は眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が伸びてしまうことに関係しますが、体の成長とも関係があり、成長期の子どもは眼軸が伸びやすく、近視が進行しやすい状況にあります。それは、幼い頃に近視が発症するとそれだけ進行しやすくなってしまうことや、体が成長を続ける中学や高校の頃までに十分な配慮が必要なことを示しています。

 さらに、近視の進行速度は小学校高学年よりも低学年の方が速いことも報告されています。近視については、そのメカニズムや治療法など、眼科分野で多くの研究が進められていますが、学童期からの対策が必要であることは確かであり、眼科医の指導を受けながら学校教育の中で対策を講じていくことが重要だと考えています。

 ICT機器を用いること自体が、子どもの近視の発症や進行に直接関係するわけではありませんが、端末やオンラインの利用により、子どもの学習環境が変化することに対しては留意が必要です。近視の予防としては、「近くを長時間見ないようにする」という対策の他に、屋外活動を増やすことが挙げられます。日中に屋外で過ごす時間が長い子どもは、近視の有病率や発症率が低いことが報告されています。1日2時間以上の屋外活動が推奨され、日陰でも効果があることが報告されています。

 目の疲れを軽減する方法として、20分間近くを見たら、20秒間作業を止めて20フィート(約6メートル)先を見るという「20―20―20ルール」が、American Academy of Ophthalmology(米国眼科学会)でも推奨されています。そして近年では、20分ごとに20秒間遠くを見て、1日に2時間は屋外活動をするという「20―20―2ルール」も提唱されています。ICTの活用と子どもの健康を考えていく上では、授業時間だけではなく、休み時間や放課後の過ごし方、さらには子どもの生活習慣を含めて総合的に考えていく必要があります。

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