【新時代の部活動指導(5)】3人が学年を動かす

京都橘高校吹奏楽部前顧問・吹奏楽指導者 田中宏幸
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前回の締めくくりに、総務(部長・副部長2人)の3人との距離を縮めるということを、作為的にやろうとしているような書き方をしていたが、実を言うと彼女らとはあのどう喝事件(第3回参照)より1週間ほど前から、ごく自然とフレンドリーに接していた。いや、彼女らがそう接してくれていたという表現が正しい。

彼女らは、日々のルーティンとして、部活動の開始前にわれわれ指導者にお茶を入れに来てくれていた。その時に、いろいろとこちらから話し掛けたが、嫌がらずににこやかに答えてくれていた。「学食のイチ推しメニューは?」というようなたわいないことから、彼女ら自身が下級生時代に被ってきた理不尽なことまで。先代顧問の先生からお聞きする話も貴重だが、この3人から得る情報は、それに勝るとも劣らないほどだった。

3人のキャラクターがかぶっていないことも、それぞれに異なる質問をぶつけられてよかった。部長のWさんは、大変優しく気遣いのできる子なのだが、悪気はないけど普段は仏頂面をしていて、下級生に恐れられる存在だ。学年内ではにこやかで照れ屋である。

副部長のFさんは、高校生とは思えないほどおしとやかで丁寧な子だ。勉強もトップクラスだということで、後にフリーアナウンサーとなり、定期演奏会のMCも担当してくれた。

もう一人の副部長Hさんは、対照的にボーイッシュな子で、どんなことも歯に衣着せずズバズバと指摘するので、下級生には一番怖がられている。私にとっては一番いろいろと相談しやすい子だ。後にマーチング指導者として活躍することになる。

結果としてこの総務3人が、私と3年生全体をつないでくれた。彼女らが学年の中で私のことを良く伝えてくれ、プラスイメージが育った。また、当時は学校の生徒管理力が弱く、練習が終わって下級生が帰っても、3年生がだらだらと残ってクレンジングクリームで洗顔したり、菓子を食べたりしていた。私は「おい!いつになったら帰るねん。俺はこれから大阪へ帰るんやぞ!」と心の中では思っていても、それをこらえて3年生の雑談に加わって毎晩ダベった。そんな私だが、彼女たちから軽く見られてなれなれしくされなかったのは、女子校伝統の強烈な上下関係に守られていたからだ。それだけに、私は一気にそれを取り去ることは得策ではないと考えるようになっていた。

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