【ユニバーサルデザイン(4)】動画は「スローにちょっとずつ」

熊本大学准教授 菊池哲平

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 オンライン授業にはさまざまな方式のものがあり、オンラインではない遠隔授業も含めて整理すると図のようになります。ZoomやGoogle Meetなどビデオ会議システムを用いて行われるリアルタイム型のものが多いようですが、YouTubeなど動画配信サービスを用いるオンデマンド型の授業も有用です。

遠隔授業(オンライン授業)の方式の分類

 例えば、大人数を対象に教員の説明が主となる授業であれば、Zoomを用いて授業をするよりも、接続トラブルに強いオンデマンド型のメリットが大きいと思われます。オンデマンド型の場合、受講者が何度も繰り返し視聴できるため、理解が追い付かなかったり、途中で休憩を入れたりするなど、「スローにちょっとずつ」学習できるため、特に発達障害のある学生にとっては助かることが多いようです。

 逆に考えると、対面授業では教員の説明を一度しか聞けないため、集中の持続に困難があるADHD傾向のある人は聞き逃しが生じてしまいます。また、ワーキングメモリーに困難がある人は教員の話を聞きながらメモをすることが難しいため、学習に困難が生じてしまいます。また、全員が同じペースで学習するため、与えられた活動が終了しないまま、授業が先に進んでしまうこともあるでしょう。その点で、オンデマンド型のオンライン授業は、自分に合った学習ペースで学ぶことができ、個別最適化にうってつけの方式なのです。

 一方で、オンデマンド型授業のデメリットとして、他の受講者との学び合いができないことが挙げられます。教員が一方的に説明する場面ばかりでは学習が深まらず、表面的な理解にとどまってしまう可能性があります。そのため、オンデマンド型授業動画では、さまざまな工夫を施す必要があります。

 例えば、授業終了後に受講者からの感想や質問を集め、次回授業時に代表的なものを紹介したり、質問に答えたりする機会をつくることも一つです。また、受講者の代表をオンデマンド動画に参加させ、対話形式で収録するなどの方法もあります。あるいは授業を前半と後半に分け、前半部分の予備知識の伝達は教員によるオンデマンド動画で行い、後半はZoomでディスカッションを行うなどの使い分けも考えられます。

 今後、コロナ禍が終息して対面授業が全面的に再開した後にも、対面授業を収録して復習に役立てたり、事前学習用のオンデマンド動画を作成したりするなど、新しい授業の形態としてオンデマンド型授業にはさまざまな可能性があります。そうした工夫により、発達障害のある人の授業への困り感を軽減することが可能なのだと思います。

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