【「名もなき校務」を応援(1)】倫理の先生がマイクロソフトへ

日本マイクロソフト株式会社 コーポレートソリューション事業本部 ソリューションスペシャリスト、元高校教員 栗原 太郎

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 私は現在、日本マイクロソフトにおいてクラウド製品群Microsoft 365の技術担当として、学校のICT化に携わっています。今回は弊社のWebサイトで公開している「働き方を劇的に変える ICT の小技10」に興味を持っていただいたことをきっかけに、先生の働き方とICTというテーマで連載を持つことになりました。よろしくお願いいたします。

 私自身はもともとICTの世界にいたわけではなく、社会の教員をしていました。専門は倫理の古代ギリシア哲学でしたので、ICTはおろか電気すらない数千年前の世界を生きていたような人間です。そんな私が得体の知れない「クラウド」に関わるまでの経緯、そしてこの世で最も面白いと思っている教職から離れたことについてお話ししたいと思います。

 「教員になればどんなにつらくても一日一回は生徒と笑えるだろう。」就活で悩んだ末に出した結論から、少し長めの大学生活の中で教員免許を取りました。実践よりも教育の本質を問い続けるユニークな教職課程から、後の行動指針となることを学びました。教育のパラドックスと動機付けの理論は探究学習、日本が世界に誇る教員の同僚性の喪失と過労状況は働き方改革へと突き動かすきっかけになったと思います。

 大学卒業後は茨城の私立学校で働き始めました。着任時はごくごく一般的な学校という印象で、先生主体で分かりやすい講義の授業を進め、丁寧に質問を受けていくような学校でした。そんな中、手探りながら一切教えない授業をひっそりとスタートさせました。想像を超える成長をしていく生徒の姿から教職の魅力にはまり、充実した日々を送っていました。同時に自分一人の力に限界を感じ、多くの先生と協働する必要性を強く感じ始めました。

 先生たちと新しく何かやっていくことは想像以上に難しいものでした。当時の職員室は静かでせわしなかったです。驚くほどシーンとしているにもかかわらず、机で必死に作業をする教員がほとんどで、雑談はおろか業務の話もしにくい空気でした。さらに驚いたことは、一人一人と話してみると実は皆優しく、協力的で、教育に情熱を持っていたということです。

 職員室の空気を変えていく方法は地道なものでした。毎日一人一人と数秒でも雑談し、共通の話題が出たときは先生同士をつなげていきました。教員が議論する学び合いスペース、互いの書籍を共有する本棚を設置し、コーヒーを入れ、楽しく話し合う輪を広げました。徐々に先生方の課題意識、価値観が表面化していき、学習指導要領改訂、大学入試改革のタイミングも重なり、ついに学校全体で探究的で深い学びを行っていくことになりました。

働き方を劇的に変える ICT の小技

マイクロソフト GIGA スクールパッケージ


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【プロフィール】

栗原太郎(くりはら・たろう) 日本マイクロソフト株式会社においてMicrosoft 365を中心としたクラウド製品のスペシャリストとして学校現場のICT化に従事。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校教諭(倫理)、日本ヒューレット・パッカード株式会社ITコンサルタント(製造業)を経て2020年より現職。

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