【ユニバーサルデザイン(5)】音声ノイズにご用心

熊本大学准教授 菊池哲平

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 発達障害のある人のオンライン授業の困り感の一つに、音声ノイズの問題があります。特に自閉スペクトラム症の人は感覚過敏性を抱えている場合があり、「サーッ」というノイズが混ざっていたり、エコーがかかったような反響音が大きかったりすると、講師の声が聞き取りづらくなり、授業の内容理解に影響することがあります。

オンライン授業における音声のポイント

 このような音声ノイズは、収録環境に問題があって発生するケースがほとんどです。特に教室でのオンライン授業の収録は、吸音材などを使用した施設設計でない限りは、壁などに反射した音声をマイクが拾ってしまい、エコーがかった音声になってしまいます。

 特にZoomの場合、ハウリングを防ぐために発言者の音声はフィードバックされないようになっています。そのため、自分の声が受講者側にどのように聴こえているかモニターできず、注意が必要です。

 私の研究室で行った研究では、わざと反響音を増大した授業動画とそうでない動画を比較した場合、前者の方が受講者にかかるストレスが大きいことが分かりました。またADHD傾向の高い受講者の場合は集中が困難になり、試聴後の理解度テストでは成績が低くなっていました。可能な限り音声をクリアにする工夫が求められます。

 それでは、音声を改善するための工夫として、どのようなことが有効なのでしょうか。一つは収録するマイクの交換です。PCやタブレット端末の音声入力マイクは幅広く音を拾うように設計されているため、壁に反射した音なども拾ってしまいます。音を拾う方向が狭い指向性ダイナミックマイクや口元にセットするヘッドセットマイクなどを利用すると、かなり聞きやすくなります。ただし、ヘッドセットマイクは発言者の呼吸音も拾ってしまうため、セット位置には気を付ける必要があります。

 もう一つは、収録環境の調整です。前述したように通常の教室はかなり音が反響します。教室でリアルに会話しているときには気になりませんが、録音するとそれが顕著になることを実感します。これまでの教室は、音環境がほとんど考慮されていなかったと言っても過言ではないでしょう。教室に吸音材を設置するなどして音環境の改善を図っていく必要がありますが、例えばマイクの周囲に本などを積み上げておくだけでも反響音が減退しますので試してみてください。

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