【「名もなき校務」を応援(2)】探究する学校に向けて

日本マイクロソフト株式会社 コーポレートソリューション事業本部 ソリューションスペシャリスト、元高校教員 栗原 太郎

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 探究型の学校を目指すという先生方の共通認識が持てたものの、課題は山積みでした。体験したことがない学びを創り出すことは、まさに答えのない探究活動でした。多様な教育観を認め合い、相対化しつつ、いろいろなアイデアを出していくことで新しい教育は創られていきます。先生方の協働性を発揮するためには、一人一人の心のゆとり、余白の空間・時間をいかにつくっていくかが大切でした。前回紹介した「静かでせわしない職員室」では新しい教育は生まれず、既存のものを踏襲していくしかありません。

 創造的な教育活動に没頭できるよう、先生たちと働き方そのものの改革を行っていきました。ここでようやくICTの出番になります。大きく分けると「コミュニケーション」「繰り返し業務」「働く環境」の改革をしました。詳しくはこの後の回で書きますがそれぞれ、仮想と現実空間の特性を生かして問いを生み出す創造的なコミュニケーションを増やしたこと、業務の多くを占める伝言ゲームや転記作業といった作業を自動化したこと、限定的で非効率的な働き方を多様なものにしたことになります。

 その結果、魔法のように学校は変わりました。1日何%の時間をつくり出せたといった数値化できる部分もそうですが、多くの「目に見えない足かせ」のようなものを取り払っていったことが大きかったと思います。足かせのなくなった先生方には、驚くことばかりでした。個性を最大限発揮しながら協働することで、常に新しいものを生み出し、チャレンジしていくような職場になりました。私にとって前から楽しいと思っていた教職は、比べられないほど楽しいものになっていました。

 そんな充実した教職生活にも転機が訪れました。きっかけは、学校改革が一段落した際、別の学校へ見学に行ったことです。そこで見たのは「静かでせわしない職員室」で働く、疲弊した先生方でした。「自分に何かできるのでは?」――学生時代からずっと「自分が楽しく働ければよい」と思っていた職業観が変わった瞬間でした。

 先生方だけで進めてきたICTを業者側の視点からも理解しようと、思い切って外資系IT企業にエンジニアとして転職し、教育業界よりも進んでいる民間企業のIT支援を行いました。現在は文教担当として、日本マイクロソフトに勤務しています。教員時代の三つの改革で得た知見を基に、弊社の企業理念である「個人と組織がより多くのことができる」手伝いをしています。次回以降、三つの改革とICTをそれぞれ詳しく見ていければと思います。

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