【紙からデジタルへ(2)】子どもたちのICT使用

ペンシルバニア大学教育大学院教授 バトラー後藤裕子

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 学校教育の中でICTを有効に活用していくためには、まず子どもたちの学校外でのICT使用の状況を把握しておくことが大切でしょう。現在の小中高校生の多くは、生まれた時からすでにインターネットがあり、ノートパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどに囲まれ、YouTubeなどの動画を見て育ってきました。

 総務省情報通信政策研究所のアンケート調査(2021年)では、10代の平日のネット使用率は92.6%で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に1日平均64.1分、動画視聴に74.2分、デジタル・ゲームに33.8分を費やしています。SNSではテキスト中心のものより、Instagramなど動画や写真中心のものが10代の間では人気を博しており、ネットワークを駆使しながら、自分が欲しい情報はSNSを通じて得るのが主流になっています。デジタル機器やアプリに慣れ親しんでいる世代なのです。

 しかし、ただデジタル機器を手にしたからといって、ICTを有効活用しているとは言い切れません。ICTは人間の認知機能を拡張し、無限の可能性を秘めていますが、その一方で使い方を誤るとマイナスの結果を招くことになりかねません。OECDも「素晴らしいスマートフォンを持ちながら、貧しい教育を受けている子どもは、深刻な危機に陥る」と警告しています。

 ニュースもたまたま目にしたものを入手して、その信ぴょう性を疑わない人の割合が、10代では高い傾向にあります。また、スマートフォン上では細切れの情報を入手することが多いので、ある程度の長さをもったテキストを学校以外で読む機会が平均的には少なくなってきています。

 プレンスキーというアメリカの教育評論家は、01年の段階ですでに、ICTに親しみながら育ってきたデジタル世代は、それ以前の世代と比べて、認知・行動上に大きな違いが見られると指摘しています。彼らは情報処理のスピードが速く、SNSをしながら動画を見るなど、同時並行で情報処理を行います。テキストよりも画像を優先し、情報へのランダムなアクセスを好み、能動的で、単独行動よりも他人とのつながりを重視します。勉強や仕事は我慢してもやるべきものという発想はなく、そもそも勉強や仕事と遊びの区別をしない傾向があり、興味があれば時間の投与を惜しまない世代だと言います。

 プレンスキーの分析は、世代間の違いを多少単純化している面がないとは言えません。しかし、デジタル世代がそれ以前の世代とは違う認知処理や嗜好(しこう)を持っていることは確かであり、これからの学校教育はこうした彼らの特徴を把握し、考慮した形で進めていく必要があると思われます。


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