【ユニバーサルデザイン(9)】教室は罪なやつ

熊本大学准教授 菊池哲平

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 オンライン授業になり、学びの場は教室から自宅に変わりました。当然ですが、オンライン授業は、受講者がそれぞれの自宅で受けることになります。

オンライン授業の目的・内容の階層性(菊池(2020)授業UD研究より)

 しかし、自宅には自分が好きなものやこだわりのあるものが多いため、なかなか授業に向かう気持ちをつくることができません。画面から目を離せば、テレビやゲーム、趣味の本などが誘惑してきます。実際に教室に来れば、おのずと「これから授業を受ける」という気持ちになりやすいですし、チャイムが鳴れば授業の始まりだということが分かります。あるいは授業中に注意がそれたとしても、周囲の友人が真面目に授業を受けている姿を見て、再び授業に集中することもできます。

 オンライン授業は、教室がそれまで暗黙裏に果たしていた機能を浮き彫りにしたと言えるでしょう。教室という学びの場があることで、授業が支えられていた部分があるのです。

 教室という環境がない状況では、学びの集団としてのクラスづくりや受講生同士の関係づくりも難しくなります。図はオンライン授業の目的を階層的に捉えて整理したものです。一般的なイメージでは、オンライン授業は一番上の階層「新規の学習内容」ですが、実はその下の階層がうまく機能していないと先に進みません。特に小中学校でオンライン授業を進めていく場合は、オンライン上で下の3階層も丁寧に行っていく必要があります。

 もちろん、学習はそもそも個人で進めるものであり、自宅での学習は誘惑に負けずに自己管理ができるようになることが大切である、と考える方もいるでしょう。しかし、発達障害のある人の場合は自己管理そのものが苦手で、そのために授業に参加できず、学習が遅れてしまうこともあるのです。そうした障害特性から生じるハンディキャップは、可能な限り解決していくことが求められます。

 そのため、オンライン授業を展開するためには、積極的にさまざまな手だてを講じて授業の雰囲気をつくり、共に学びを進める仲間づくりを進めていくことが肝要です。例えば、授業に入る前のあいさつや出席チェック、健康観察などをすれば、授業が始まる雰囲気をつくることができます。オンデマンド動画の場合は、チャイムの代わりに授業動画の冒頭に音楽を入れて雰囲気をつくることも有効でしょう。また、授業外でも仲間づくりのための簡単なレクリエーションをすることで、授業での学び合いも深まりやすくなります。

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