【紙からデジタルへ(3)】デジタル本・教科書の特徴

ペンシルバニア大学教育大学院教授 バトラー後藤裕子

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 日本でも本格的にデジタル教科書が学校教育で使用されることになり、デジタル上での読解や学習は、これまでの紙を媒介としたものとは違うのかという点に、多くの人が興味を持っているのではないかと思います。今回は、デジタル本・教科書がそもそも従来の紙の本や教科書と比べて、どのような特徴を備えているのかを考えてみたいと思います。

 デジタル本とは、紙の本の上にマルチメディアの機能が付いたものだと捉えることができます。最も一般的なマルチメディアの機能としては、テキストを読み上げてくれる機能(つまり文字を見ながら、同時に音声を聞くことができる)や、イメージやアニメーションなどにアクセスできるハイパーリンク機能が挙げられます。本によっては、ゲームやクイズが付加されていたり、辞書やクリックするとアニメーションが見られるなどのホットスポットの機能が付いていたりすることもあります。読み上げられているテキストの部分がハイライトされたり、バックグラウンド・ミュージックや動物の鳴き声などの音響効果機能が付いていたりするものも見掛けます。デジタル教科書では、学習者が重要だと思われる部分をハイライトしたり、メモを取ったり、関連する内容のものを移動したり、まとめたりという機能が付いているのが一般的です。

 こうしたマルチメディアの機能は、うまく使えば学習の向上に役立ちます。視覚と聴覚の情報を一緒に処理する方が、別々に処理するより、記憶などの認知活動が促進されるからです。一方で、場合によっては、あまり効果をもたらさないものもあります。ゲームやクイズ、またハイパーリンク機能などは、タイプによっては子どもの認知資源を奪いすぎてしまい、読解や理解にマイナスに働いてしまいます。図、写真、地図、イラストなどは紙の教科書でも使われてきましたが、デジタル教科書ではこうした視覚情報のインパクトが強くなる傾向があります。その場合、子どもの注意が言語情報より非言語情報に引っ張られる可能性があります。そして、こうした表象に基づく解釈や理解は個人差が大きく、テキスト情報だけに基づいた解釈・理解とは異なったものになりがちなのです。

 まとめると、デジタル本・教科書に付いているさまざまな機能は、子どもの年齢やそれに伴う認知能力にマッチしたものであれば有効に働きます。一方で、子どもの認知資源を消費しすぎる形になってしまうと、かえってマイナスの結果をもたらす可能性があるのです。


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