【ユニバーサルデザイン(10)】明日へのマーチ

熊本大学准教授 菊池哲平

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 始まった当初こそ、受講者と授業者の両方から不満が噴出していたオンライン授業ですが、徐々にそのメリットも指摘されるようになってきています。早稲田大学の調査では、春学期において31.8%だった学生の満足度が、秋学期では52.1%に上昇しています(早稲田大学、2021年5月21日発表資料)。また、教員に対する調査(東京大学大学経営・政策研究センター、2021)の結果からも、オンライン授業が有効な学びの手段であると認識されつつある様子がうかがえます。

 コロナ禍がいったん収束したとしても、今後は再燃のリスクもあれば、コロナウイルス以外のパンデミックが発生する可能性もありますので、効果的なオンライン授業の在り方は検討していく必要があります。

 さらに、コロナ禍において培われたオンライン授業のノウハウは、コロナ禍後においても活用していくべきでしょう。特に対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド授業」は、対面授業とオンライン授業の利点を融合させることができる強力な授業の形態です。そして、その恩恵はさまざまな障害のある児童・生徒・学生に大きな効果をもたらすのではないでしょうか。

 例えば、対面・オンラインを選択可能な「ハイフレックス型授業」は、身体障害のある人にとって、通学や教室移動などの困難を大きく解消するものとなります。また、発達障害のある人にとっても、授業動画を複数回視聴したり途中で休憩を挟んだりできるようになることで、学習成果そのものに良い効果をもたらすと考えられます。さらに不登校など、対面授業に心理的・情緒的な側面から参加が難しい児童・生徒・学生に対しても、オンラインでの受講を可能にすることが学習保障の観点から重要です。

 ただし、ハイブリッド授業を導入する場合、どちらの授業形態を選択しても同等の学習(学修)効果が得られるように工夫しなければいけません。そのため、対面授業とオンライン授業のどちらでも快適に学びやすくなるよう、これまでの連載で述べてきたような工夫や手だてを講ずるなど、徹底したユニバーサルデザイン化が求められます。単純にハイブリッド化すればよいというわけではないのです。

 コロナ禍によって期せずして始まったオンライン授業ですが、さまざまな障害や特性のある人を念頭に置いたユニバーサルデザインの視点を踏まえることで、これまでよりも学習成果を向上させることができ、これからの授業の在り方そのものにも大きな変化をもたらすでしょう。

(おわり)

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