【探究学習のメソッド(13)】[終わりに]生涯にわたって探究できる力を育てる

東京学芸大学准教授 登本洋子
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 最終回となる第13回は、生涯にわたって探究できる力の育成についてです。

 「良い大学に入り、有名な企業に就職することが幸せ」という価値観から、試験で1点でも良い点数を取るための学習が依然として重視されているのは、なぜなのでしょうか。

 文科省の調査によると、2019年度の中高校生の不登校数は17万8022人に上ります。そのうち主たる要因が「学業の不振」「進路に係る不安」である生徒が1万8476人(10.4%)、「無気力、不安」である生徒が6万7394人(37.9%)に上ります。1年で8万5870人(48.2%)もの中高生が、学業不振や進路に係る不安、無気力・不安のために登校することができていないのです。「無気力、不安」の理由は学習ばかりではないでしょうが、学校がそれほどまで登校することを嫌に思う場所であり続けてよいのでしょうか。学ぶことは、そんなにもつらいことなのでしょうか。

 不登校にはならなくても、同じような悩みを持つ生徒となると、その数はもっと多いことでしょう。生涯にわたる学習が必要とされる人生100年時代、私は試験で1点を競い合う学校よりも、学ぶことそのものを好きになる学校であってほしいと強く思います。

 また、近頃の子供たちはリアルな体験が不足しがちと言われます。学習と生活が結び付いていないと思われる生徒の増加を感じている先生方も多いのではないでしょうか。子供たちだけで自由に遊ぶことができる場所も減り、生徒たちが学校以外で時間を費やすことと言えば、習い事、塾、ゲーム、携帯電話が主なことになりつつあります。自然豊かな過疎地域では、人口減により遊ぶ友達もいないという話を聞きます。

 知識を覚えることも時には重要です。でも、生徒にとって学校は1日の大部分を過ごす場所です。普段の学習から全てそうだとしたら、なんとつまらない日々でしょう。ただ知識を受け取って覚えるだけの学習から脱し、生徒が自分でつかみ取る学習に転換していく必要があります。そのために私たちは、生徒たちが知識とその活用方法を自分で獲得できるようにすることに努め、卒業後は自分一人でも、生涯にわたって探究し続けられる力を得られるように支援しなければなりません。

 その一つとして、生徒一人一人の好奇心がスタート地点になり機動力になる「総合的な探究(学習)の時間」の取り組みが、部活動や委員会の活動などと並び、生徒自身が中学校や高校を卒業する時に「私は〇〇に力を入れて取り組んだ」と言えるものになってほしいと願っています。

 本来学ぶことは楽しく、自分の世界を広げてくれるものであるはずです。

 (終わり)
 

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