【激甚化する自然災害に備える(1)】学校防災体制を巡る現状の課題

滋賀大学教授 藤岡達也

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 自然災害が頻繁に発生する日本列島では、従来から子供たちを事故・災害から守る取り組みが学校の中で懸命になされてきた。しかし、2011年に発生した東日本大震災では、多くの子供たちが犠牲となった。特に宮城県石巻市立大川小学校では児童74人、子供を守るはずの教員10人の尊い命が奪われた。

 この悲劇を含め、近年の事故・災害を踏まえて、文科省は2021年6月に学校の「危機管理マニュアル」等の評価・見直しガイドラインを公表した。このガイドラインでは、児童生徒等の安全を確保するためには、教職員が「危機管理マニュアル等」に基づいて迅速かつ的確に行動することが不可欠であり、マニュアルは常に見直し改善すること、そして実践的な研修や訓練を行うことが大切であることが示されている。記載された多くの具体的な事例は、各学校でも活用が可能である。一方、Webサイトで公開されているため、保護者や地域住民も目にすることが可能となり、これに照らし合わせて学校の姿勢や体制が問われることにもなる。

 当然、どの学校もマニュアルの作成、避難訓練・引き渡し訓練の実施、改善等に取り組んでいる。学校の置かれた自然環境、社会環境、児童生徒の発達段階等を踏まえて、さまざまなケースを想定した取り組みが見られる。具体的には、地震・津波、豪雨、暴風、火山噴火などの自然災害や火災、原子力発電所事故などの事故災害への対応が見られ、避難訓練等を重ねることによって、教職員および教職員間の意識向上や情報共有につなげている。

 ただ、学校や教職員が意識しておく必要があるのは、学校での安全管理・防災管理の視点だけでなく、児童生徒が学校以外の場所、家庭や地域、大人が近くにいないときにも適切に対応できる力の育成である。そのためにも、学校では、子供たち自身に「なぜ、そうしなくてはならないか」を理解させたい。例えば、「机の下に潜り込むのはなぜか」「校庭に避難するのはなぜか」などである。

 自然現象では、日本列島に自然災害が多い理由として、4枚のプレートが影響し合っていること、温帯モンスーンに属していることなどを学ぶ。社会システムとしては、日常からの注意報、警報、特別警報の意味を知る。「生きる力」の育成には教科横断型のカリキュラム・マネジメントも重要であり、社会に開かれた教育課程の姿勢も求められつつある。

 さらには日本だけでなく、持続可能な社会の構築には国際的な動向も踏まえ、SDGsの「誰一人取り残さない」姿勢が学校防災にも期待される。


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【プロフィール】

藤岡達也(ふじおか・たつや) 滋賀大学教授、東北大学災害科学国際研究所客員教授。大阪府公立学校教員、大阪府教育委員会・大阪府教育センター指導主事、上越教育大学教授(附属中学校長兼任)等を経て現職に至る。博士(学術)。文科省学校安全教育資料作成等協力者会議委員、「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」、「学校防災マニュアル作成委員会」等の専門委員、内閣府中央防災会議委員などを務める。ISDR(国連国際防災戦略会議)、国連防災世界会議「防災教育交流国際フォーラム」等で講演。専門は科学教育、防災教育、環境教育・SDGs等。著書に『絵でわかる日本列島の地震・噴火・異常気象』(講談社)、『SDGsと防災教育』(大修館書店)等多数。

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