【紙からデジタルへ(8)】人工知能との共存

ペンシルバニア大学教育大学院教授 バトラー後藤裕子

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 人工知能(AI)は、私たちの生活の中でもおなじみのものとなりつつあります。AI研究は停滞していた時期もありましたが、深層学習という方法を導入することで、近年飛躍的な進化を遂げています。AI自動車も現実化してきましたし、お掃除ロボットを自宅で使っている読者の方も少なくないでしょう。子ども向けの社会ロボットも、いろいろなタイプのものが出回るようになりました。中には1万円以下のものもあり、我が子に使わせているという方もいるかもしれません。

 社会ロボットの言語学習への効果に関する研究はまだ多くはありませんが、子どもはコンピューターの画面上で動くデジタル・キャラクターより、手で触ることのできる社会ロボットの方に、より注意を向けやすいことが知られています。社会ロボットをおもちゃではなく、友達のような感覚で捉えられる子は、社会ロボットからの学びが期待できると言われています。外国語の学習に関しては、幼稚園児の間では、社会ロボットの効果はあまり大きくありませんが、小学生では効果的であったとする報告が多くなります。どのような言語フィードバックを社会ロボットが子どもに与えることができるかが、効果を左右する一つの鍵のようです。今後、技術の発達でロボットがより自然に近い会話をできるようになれば、ますますその使用効果は期待できるでしょう。

 社会ロボットの他にも、機械翻訳やAIを使ったライティング活動など、AIは教育場面で活躍の幅を広げています。国際的に知られている英語の熟達度テストの多くは、AIを使ってスピーキングやライティングの採点を行っています。トレーニングを積んだ人間の採点者に引けを取らない正確さで採点ができるレベルに達しているからです。ただ今の時点では、AIは発音や語彙などの評価は得意ですが、論理の一貫性の評価など、あまり得意としていない領域もあります。

 機械翻訳もここ数年、飛躍的にその精度を上げてきました。これから教師を目指す学生たちにとって機械翻訳は身近なツールであり、自分が教師になったら英語の授業でも積極的に使っていきたいとする人は多いようです。機械翻訳はまだ不十分な点が残っているので、それを逆手に取って、どこがおかしいのかを生徒たちに修正させ、言語間の違いを認識する(メタ認知)能力を高めるのに使ったり、初心者への導入は制限したりするなど、機械翻訳の特性をうまく授業で利用していきたいと考えているようです。機械翻訳の導入で、教師の役割も変わっていくことでしょう。


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