【激甚化する自然災害に備える(6)】避難訓練のアップデート③広域的な視点を持った取り組み

滋賀大学教授 藤岡達也

この連載の一覧

 引き渡し訓練など、保護者や地域との連携が求められることもある。引き渡し訓練にもさまざまな方法があり、引き渡し場所も運動場、体育館、各教室など、共通の決まりがあるわけではない。引き渡しカードも含め、日常からの保護者への周知徹底した連絡が重要である。

 また、地域ごとに複数の学校が共同して訓練を行うことがある。例えば、原子力発電所事故など、広範囲の地域で避難が必要な場合には、複数の教育機関などが合同で訓練を実施することも重要である。保護者が小学校、中学校と両方の児童生徒を迎えに行く場合を想定した引き渡し訓練などでは、最初に小学校で引き渡し、その1時間後に中学校で引き渡すなど、時間差を設けることが考えられる。小学校内に幼稚園が併設されている場合や、中学校と保育所が隣接している場合などは、共同で避難訓練を実施するようなことも試行されている。最近では、コミュニティーセンターが学校と隣接していたり、近くに設置されたりしていて、避難訓練や炊き出し訓練などを共同で実施しているところもある。

 学校が避難所になった場合の教職員の役割、必要な準備なども意識しておく必要がある。一般的に避難所運営は、市町村防災担当部局が担うこととなっており、教職員は災害発生時の原則として、児童生徒の安全確保、児童生徒の安否確認を最優先事項として、学校教育活動の早期正常化に取り組むことになっている。

 しかし、東日本大震災や熊本地震のような大規模な災害では、防災担当部局がすぐに避難所を運営するのが厳しく、教職員の協力が不可欠であることが明確になった。2017年に文科省が出した通知「大規模災害時の学校における避難所運営の協力に関する留意事項について」に、学校が避難所になった場合の運営方策、学校の組織体制の整備、災害時における教職員の避難所運営への協力業務と教職員の意識の醸成など、8項目が示されている。さらには、教職員の具体的な参集・配備の在り方や役割分担、地域の自治組織やボランティアなどとの連絡・調整、PTAや避難者等々の情報共有の在り方など、校長だけでなく、組織的な学校の避難所体制の構築を求めている。

 近年では、新型コロナウイルス感染症への対応も必要となってきている。校長や学校設置者はさまざまなケースを想定しておくことが求められ、日常からの地域の情報収集、関係機関との連携などが重要となる。


この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集